不動産特定共同事業の分配金 ― 「任意組合」と「匿名組合」で税金が変わる!
- 智史 長谷川

- 11月6日
- 読了時間: 3分
最近、「少額から不動産に投資できるサービスが増えています。
こうした仕組みは「不動産特定共同事業(不特事業)」と呼ばれますが、実は契約の形によって、投資家の税金の扱いが大きく変わることをご存じですか?
今回は、不特事業の2つの契約形態──「任意組合」と「匿名組合」──の違いと、税金への影響をわかりやすく解説します。
要約
不特事業は、不動産をみんなで出資して運用・分配する仕組み。
契約の形によって「不動産所得」か「雑所得」になる。
節税を考えるなら、契約内容の確認がとても大切。
本文
不動産特定共同事業とは
不特事業とは、複数の投資家が出資し、その資金で事業者(不特事業者)が不動産を取得・運用し、賃貸収入や売却益を分配する仕組みです。
少額から始められる点が人気で、最近はクラウド型の投資サービスも増えています。
しかし、「どのような契約を結ぶか」によって、税金の種類が変わります。
任意組合契約型とは
任意組合契約型では、投資家が共同で不動産を所有・運用するイメージです。
実際に不動産を保有しているのは投資家たち(組合員)で、賃貸収益も投資家に帰属します。
このため、投資家が得る利益は「不動産所得」に分類されます(所得税法26条)。
経費として減価償却費や修繕費を計上できるため、節税効果が見込めます。
例:家賃収入50万円、経費20万円 → 差額30万円が不動産所得として課税。
他の所得と損益通算できるため、赤字の場合は節税につながることもあります。
匿名組合契約型とは
一方、匿名組合契約型では、投資家は出資するだけで、実際の不動産運用は不特事業者が行います。
不動産の名義や賃貸収入は事業者に帰属し、投資家は利益分配を受け取る立場です。
この場合、投資家の所得は「雑所得」として扱われます(所得税基本通達36・37共-21)。
経費は基本的に計上できず、損失が出ても他の所得と通算できません。
例:配当として10万円を受け取った場合 → 雑所得10万円として申告(必要経費は限定的)。
違いをまとめるとこうなります
項目 | 任意組合型 | 匿名組合型 |
不動産の所有者 | 投資家(組合員) | 不特事業者 |
所得区分 | 不動産所得 | 雑所得 |
経費計上 | 可能(減価償却・修繕費など) | 原則不可 |
損益通算 | 可能 | 不可 |
節税効果 | あり | なし |
投資家の関与度 | 高い(共同経営) | 低い(出資のみ) |
任意組合型は実質「共同経営」、匿名組合型は「投資ファンド」に近い構造です。
投資を始める前に確認すべきポイント
不特事業への出資を検討する際は、以下の点を確認しましょう。
契約書に「任意組合」か「匿名組合」と明記されているか
不動産の名義が誰になるか
分配金の性質(不動産収入なのか、配当なのか)
税務上の扱いが説明されているか
最近のクラウド型投資サービスはほとんどが匿名組合型です。
節税目的ではなく、安定収益や分散投資を目的に利用するのが現実的です。
税金のまとめ
契約形態 | 所得区分 | 節税効果 | 損益通算 |
任意組合契約型 | 不動産所得 | あり | 可能 |
匿名組合契約型 | 雑所得 | なし | 不可 |
任意組合型なら、経費計上や損益通算ができるため節税メリットがあります。
匿名組合型はシンプルですが、税務上のメリットは限られます。
まとめ
不動産特定共同事業は、手軽に不動産投資を始められる便利な仕組みですが、契約の形によって税金の扱いがまったく違います。
「任意組合型」は共同経営に近く、「匿名組合型」は金融商品のような構造です。
投資を始める前に契約形態を確認し、自分の投資目的に合った選択をすることが大切です。
不明点がある場合は、税理士などの専門家に相談しましょう。
