税務スケジュールQ&A
税務・人事関係の各種事務手続きは多岐に渡り、中小企業が自社で実施する場合、漏れのないように年間スケジュールのイメージは掴んでおく必要があります。外部に外注する場合であっても、自社で全体を把握し管理することは重要になります。一度理解し、年間通して経験すると、実は複雑なことはなく、各種システムを利用して自社で無理なく運用することができます。
ここでは、3月決算(消費税の中間申告は1回)のケースを想定し、全体の流れを確認します。
<年間スケジュール>
<納付時期に特例が存在する項目>
特例を受けるためには、一定の要件を満たした場合に事前に所定の手続きが必要になります。
<納付時期及び納付回数が法人ごとに相違する項目>
法人ごとに相違するため、各行政から送付される納付書等により納付時期を確認する必要があります。
1月
Q:法定調書とはなんですか?どのような場合に提出する必要がありますか?
法定調書とは、所得税法、相続税法、租税特別措置法などの規定により税務署に提出が義務づけられている資料をいいます。主な法定調書の種類は以下のとおりです。これらの法定調書の内容を「法定調書合計表」に記載し、1月31日までに税務署に提出します。法定調書の範囲や金額要件などは、税務署が作成する手引きで確認することができます。
また、税務署に提出する法定調書とは別に、「給与支払報告書」及び退職所得に係る「特別徴収票」をそれぞれ所定の市区町村に「給与支払報告書(総括表)」を添えて提出する必要があります(記載内容は、法定調書の内容とおおよそ同じです)。
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「給与所得の源泉徴収票」
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「退職所得の源泉徴収票」
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「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」
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「不動産の使用料等の支払調書」
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「不動産等の譲受けの対価の支払調書」
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「不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書」
Q:償却資産税の申告はどのような場合に必要でしょうか?
償却資産税は、土地や家屋以外の事業用資産(償却資産)について課税されます。償却資産を有している会社は、毎年1月1日現在に所有している償却資産の内容を1月31日までに償却資産の所在する市区町村に申告します。各市区町村が申告をもとに税額を計算し、年4回の分割払いにより納付します。税率は自治体により相違しますが、1.4%程度であり課税標準額が150万円未満の場合は免税となります。
3月(決算月)
Q:(設立事業年度を除いて)税務署に提出する届け出について、事業年度末に期日が設けられており注意が必要な書類があると聞いたのですが、具体的にどのような内容になりますか?
消費税に関する以下の届出は、適用しようとする事業年度が開始する前までに提出することが必要であり、提出が遅れた場合は適用ができなくなり不利益を被る可能性があります。
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消費税課税事業者選択届出手続(免税事業者が課税事業者となる場合)
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消費税課税事業者選択不適用届出手続(課税事業者が免税事業者となる場合)
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消費税簡易課税制度選択届出手続(簡易的な計算方法を適用する場合)
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消費税簡易課税制度選択不適用届出手続(原則的な計算方法を適用する場合)
5月
Q:事業年度終了後2ヶ月以内に各種申告をする必要がありますが、申告期限の延長制度について教えてください。
法人税申告書、地方税申告書、消費税申告書、事業所税申告書は、事業年度終了の翌日から2ヶ月以内に提出する必要がありますが、事前に「申告期限の延長の特例の申請書」を税務署及び各自治体に提出した場合に、法人税申告書と地方税申告書の申告期限が1ヶ月延長されます。消費税申告書と事業所税申告書にはこのような延長措置はありません。また、申告期限が延長された場合でも納付期日は延長されません。
Q:消費税が免税になる場合を教えてください。
その課税期間に係る基準期間(前々年)における課税売上高が1,000万円以下の事業者は、納税義務が免除されます。ただし、次の場合には免除されません。
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資本金の額又は出資の金額が、1,000万円以上である場合
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特定期間(個人事業者の場合は、その年の前年の1月1日から6月30日までの期間をいい、法人の場合は、原則として、その事業年度の前事業年度開始の日以後6ヶ月の期間)における課税売上高および給与等支払額が1,000万円を超えた場合
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特定新規設立法人(※詳細は省略)に該当する場合
Q:事業所税が免税になる場合を教えてください。
事業所税は、大都市の都市環境の整備・改善のために設けられた目的税で、一定規模(主に人口30万人以上)の都市の区域内で事業を営む事業主に課税されます。資産割と従業者割があり、資産割は市内の事業所等の合計床面積が1,000平方メートル以下の場合は課税されません。また、従業者割は市内の合計従業者数が100人以下の場合は課税されません。
6月
Q;「事前確定届出給与に関する届出」を提出する意義を教えてください。
役員給与は毎月一定の時期に同額支払う場合(定期同額給与)に、税務上の損金となります。役員給与の改定時期は原則的には事業年度開始から3ヶ月以内に行う場合に損金として認められるので、それ以外の時期に改定した場合は増額した部分または減額した部分は損金とならず課税されます。特に、他の従業員と同時期に賞与を支給したい場合は、定期同額給与から外れるので本来は認められませんが、「事前確定届出給与に関する届出」を税務署に提出していることを条件に損金計上が認められます。役員賞与の損金算入に関する諸制度は、利益操作防止の観点から様々設けられています。
11月
Q:法人税および地方税の中間申告について教えてください。
前期の年税額が20万円を超える場合に、事業年度開始後6ヶ月経過日から2ヶ月以内に中間納税を行う必要があります。以下2通りの方法があります。
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予定申告…前期の年税額の2分の1を納税します。申告は必須ではなく、中間申告期間内に下記の仮決算に基づく中間申告書が提出されなかった場合は、予定申告が行われたとみなされます。
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仮決算に基づく中間申告…前期の納税額がたまたま多額だったという場合等は、当期の上半期6ヶ月間について決算を組んで申告・納税することもできます。仮決算を行う場合は地方税も同様に中間申告する必要があります。
Q:消費税の中間納税の中間申告について教えてください。
前期の年税額(国税部分)が48万円を超える場合に、納税義務があります。法人税の場合と同様に、予定申告と仮決算に基づく中間申告を行うことができます。中間申告回数は前期の年税額に応じて以下のようになります。
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48万円超~400万円以下 年1回
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400万円超~4,800万円以下 年3回
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4,800万円超 年11回
12月
Q:年末調整の対象者を教えてください。
年末調整の対象者は、「扶養控除申告書」を会社に提出し、給与計算時に甲欄を適用して源泉税を計算している人になります。給与計算時に「乙蘭」や「丙蘭」を適用して源泉徴収税を計算している人は対象外です。また、給与収入金額が2,000万円を超える人なども対象外です。
毎月
Q:給与等に関する源泉所得税と住民税の納付方法について教えてください。
源泉所得税は「給与所得の源泉徴収税額表」から計算し、住民税は各従業員が住む自治体から送付されてくる「特別徴収決定通知書」記載の金額を給与から天引きします。源泉徴収した所得税は納付書による窓口納付の他、ダイレクト納付等の納付方法があります。住民税は各自治体から送付されてくる納付書により納付します。