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銀行等融資Q&A

 資金調達手段が多様化する中で、中小企業にとって、依然として銀行融資が資金調達手段の中心とされています。金融機関が融資判断の広く参考にしてきた金融検査マニュアルが、2019年12月に廃止されることとなり、金融機関ごとの融資のありかたも変化すると考えられています。しかしながら、従来の自己査定や償却・引当に関する実務が否定されたわけではないので、これまでの判断基準が残ると同時に、より事業性を重視した融資判断への転換が期待されています。ここでは銀行融資の基本的な疑問点にお答えします。

 

 

Q:借入を検討していますが、財務健全化のため、無借金経営を目指すべきでしょうか?

 

環境の変化やビジネスチャンスが生じたときに、柔軟に資金計画を立てられるので無借金経営をめざしたほうがよいと思います。ただし、融資実績などがないとすぐには融資を受けられないことがあるので、最低限の付き合い程度に借入を行い、実質無借金(換金性の高い資産-借入=プラス)という状態も好ましいです。

 

 

Q:良い借入と悪い借入があると聞いたのですが、悪い借入とは具体的にどのようなものがあてはまりますか?

 

赤字を補填するような借入や自社物件を取得するための借入は良い借入とは言えません。例えば、土地を取得して本社を建てる場合、投資対象である自社物件はキャッシュフローを生まないため、返済原資を別途準備する必要があります。また、土地は減価償却計算を実施しないため、税金が増加し、返済の負担感が大きくなります。

 

 

Q:借入の返済を考える際に具体的にどのようなことを考慮すべきでしょうか。

 

借入の返済がギリギリの状態だと、環境変化やビジネスチャンスに柔軟に資金を活かすことができなくなります。そのため、早い段階で返済するためのロードマップを作成し、返済計画から逆算して、必要な年間キャッシュフローを計算し、さらに必要なキャッシュフローを生み出すための必要な販売個数など具体的な売上計画への落とし込みが必要です。

 

 

Q:銀行の金利はどのように決まりますか?

 

金利は、銀行の調達金利+銀行の諸経費+貸倒れ債権+銀行の利益 という算式で決定しています。銀行間で金利に差が生じますが、規模の大きい銀行(メガバンクなど)ほど、有利な市場で資金を調達できるため調達金利が低く、また、1件あたりの融資額が大きいため諸経費も小規模な銀行と比べて低いことが想定されます。そのため、メガバンク→地銀→信金・信組といった順番で金利が高くなることが通常です。上記算式は短期金利に関するもので、長期金利はさらに将来の物価変動による金利変動予測が含まれるため、短期金利より高くなります。

 

 

Q:金利を下げることは可能ですか?

 

金利を下げることは可能です。そのためには、複数の銀行と取引を行い、それぞれの銀行から融資条件を提案してもらうことで金利を競わせることは有効です。財務内容が健全で返済原資であるキャッシュフローが十分に見込まれれば、低い金利でも喜んで貸してくれます。

 

 

Q:信用金庫・信用組合、地方銀行、メガバンクなどタイプの違う金融機関をどのように選べばよいですか?

 

会社の規模や成長ステージに応じて、借入シェアを決めていけばよいです。金融機関のタイプにより貸出額(メガ→地銀→信金順で小さくなる)や金利の大小(メガ→地銀→信金順で高くなる)が相違するため、成長ステージで必要資金の規模も変わってくるので、資金調達規模に適した金融機関を選ぶことになります。特に、メガバンクは売上規模が5億円程度以上ないと取引機会は乏しいかもしれません。

  • 信金・信組:地域密着型。小規模事業者にも対応しているが、金利は高め。保証協会付きが中心のため、貸出規模は少ない。

  • 地銀:地域密着型。信金などが対応していない規模の貸出にも対応。成長ステージにあわせた課題解決の提案などもしてくれる。

  • メガ:金利が低く、大口融資に対応している。対応は地銀以下と比べるとドライな印象。

 

 

Q:借入を成功させるためには、どのような点を意識すればよいでしょうか?

 

銀行融資で重要な点は、①資金使途を明確にすることと、②返済原資を説明することです。①資金使途は、運転資金や設備投資など事業の発展に前向きに使用される必要があります。資金使途が疑われる可能性がある場合、資金繰り表を作成し、借入資金がどのように使用されるかを可視化することが有効です。②返済原資は、調達する資金によって違いがあります。1年以内の短期借入の場合は、事業収益(売上)によって回収されます。長期借入の場合は、事業全体のFCFによって回収されます。そのため、売上計画や損益計画、資金計画を作成して、返済財源に問題がないことを示す必要があります。すでに予算管理を実施していて、予算の精度が証明されていれば、説得力が増すことになります。

また、2次的ではありますが、保全状況(担保の有無や価値)がよければ、融資判断がプラスに働きます。

 

 

Q:銀行はどのように会社の返済能力を評価していますか?

 

銀行は融資先を10~12段階で評価(信用格付け)したうえで、6つの債権者区分に分類しています。そして、この債権者区分によって銀行が貸出す債権の貸倒引当率が大きく異なることになるため、貸出しの可否や金利の大小に大きく影響します。担保や保証の状況にもよりますが、要管理先では5~20%、破綻懸念先では50-70%の貸倒引当を要求され、融資した時点で損失計上することになり、こられは基本的には融資対象外になると考えられます。

信用格付けは、大きく3つのステップに分類されます。

  • 第一次評価(定量評価):決算書の数値を格付けソフトに入力し、自動的に評価します。収益性のみならず、安全性や成長性、債務返済能力も含めて評価されます。定量評価が評価結果の大きなウエイト(70%以上)を占めているといわれています。

  • 第二次評価(定性評価):定性的な情報を評価します。たとえば、経営者の能力、事業の属する市場の成長性、過去の返済履歴、経営管理体制、販売力、技術力などです。今後は事業性評価がより重要性を増してくるので定性評価のウエイトもあがると見込まれます。

  • 第三次評価(実態評価):総合的な返済能力を評価します。売上債権や貸付金の回収可能性、土地や有価証券の含み損益、オーナーやグループ企業の返済能力などです。

 

 

 

 

 

Q:銀行の格付けを改善する方法はありますか?

 

財務内容の改善や銀行員との定期的なコミュニケーションを通じて、信用格付けも改善することがきたいできます。

  • 定量評価で格付けの70%以上が決まるので、収益性や安全性、成長性、債務償還能力を少しでもアピールできるように決算書の全体バランスに気を配ります。たとえば、P/L面でいえば、臨時的な支出を特別損失に含めることを徹底し、特別利益としていた内容でも経常的に発生するのであれば、営業外収益に含めるなどの工夫をすることで財務指標は改善する可能性があります。また、貸付金や仮払金など資金使途が不明確なものは銀行が好まないので、誤解を避けるために早期の処理を検討することも必要です。会計方針の選択も財務数値に影響を与えるため、検討の余地はあります。

  • 少なくとも四半期おきに月次決算情報や資金繰り状況を銀行に報告します。信頼関係が生じやすいのと同時に、コミュニケーション機会が増えることで事業の理解をしてもらいやすくなります(定性評価につながります)。

  • 経営計画書を上記に添付します。経営者の考えを書面で伝えることで、事業の理解度があがることや、銀行のネットワークの中から計画実現のためのリソースを紹介してもらえる可能性があります。また、銀行員は定期的に異動があるため、書面で渡していれば、効率的な引き継ぎにつながります。

  • 事業環境のプラス要因や会社の強みを分析して添付します。銀行員はビジネスのプロではないので、社長目線でも分析された資料が手に入れば好印象を与えます(定性評価につながります)。

  • 運転資本削減や余剰資金を利用して、借入を減少させることも財務内容改善に貢献します。また、役員借入金は返済を要しないのであれば、資本金に振り返る処理を検討してもいいと思います。

 

 

Q:信用格付けの改善以外に、融資を受けるにあたり留意点はありますか?

 

以下の点に留意する必要があります。

  • 税金や社会保険、公共料金などを滞納すると融資は難しくなります。

  • グループ会社がある場合、取引関係を明確にして、不透明な資金の流れがないようにします。

  • 担保物件がある場合、時価の7割くらいで評価されると考えられますが、思ったよりも低い評価とされる場合も少なくないため、担保ありきで交渉に臨まないほうがよいです。

  • 消費者金融や商工ローンは、融資が難しくなるため極力避けるのが望ましいです。

  • 安易な不適切な会計処理は避けるべきです。在庫や売上債権の水増しといった処理は、容易に気付かれ、知らず知らずのうちに評価を下げてしまっています。

 

 

Q:銀行員は決算書のどのような点を見ているのでしょうか?

 

決算書で融資実行の7割以上が決まってしまいますが、収益性や安全性、成長性、債務償還能力が重要となります。簡単な目線でいうと以下の点を確認しています。

  • 営業利益および経常利益は黒字かどうか。赤字の場合、一過性の要因に過ぎず、来期以降は黒字見込みか。また、過年度から連続して黒字かどうか。

  • 純資産はプラスかどうか。マイナスの場合でも、資産の含み益等を考慮すれば実態はプラスか。また、決算書上はプラスでも資産の含み損等を考慮した場合にマイナスにならないか。

  • 在庫や売上債権の残高水準に異常はないか。粉飾によく使用される科目でるため、前期より増加している場合は、合理的な理由を補足する。

  • 借入残高は収益水準と比較して大きすぎないか。借入残高が大きい場合、資金繰り表を作成して、資金使途と返済財源を明確にする(赤字補填ではないことを示す)。

 

 

Q:銀行に粉飾が気付かれた場合にどうなりますか?

 

担当者にもよりますが、軽微な粉飾は気付かれても何も言われない可能性があります。銀行員にとって手間がかかるので積極的に関わりたいとは思わないはずです。粉飾の程度が大きくなると、一括返済を求められたり、詐欺罪になる可能性があるため避けるべきです。粉飾は、一度行ってしまうと、よほど順調に利益が出ない限りは毎年粉飾し続けなければなりません。また、粉飾を続けると勘定科目が多岐にわたるケースも多く、会社の実際の財務内容や業績がわからなくなってしまう(手が付けられない)というデメリットがあります。

 

 

Q:融資交渉に税理士などのアドバイザーが同席することに問題はありませんか?

 

アドバイザーが同席してもよいかどうかは状況によります。本来であれば、経営者自らが一人で融資交渉をすることが望ましい姿だと思いますが、経営者をサポートする制度として認定支援機関が設けられた制度趣旨からすると、同席することは従来よりも問題が少なくなってきていると思います。

 

 

Q:銀行はどのように返済原資を判断しているのでしょうか?

 

会社の年間キャッシュフローを返済原資として判断しています。簡単な見方として、当期純利益+減価償却費が年間返済額より大きい場合に、返済能力が高いと考えます。

 

 

Q:銀行融資と節税の関係性について教えてください。

 

節税は利益を減少させるケースが多いので、純資産や債務償還年数の悪化を助長することになり、有利には働きません。節税もあわせて検討する場合、財務バランスに気を付けたり、決算書に影響を与えず法人税申告書の中のみで計算する方法などを積極的に採用するといいと思います。

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