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役員取引Q&A

 同族会社では、会社と役員との間で様々な取引が行われています。役員と行う取引は、「第三者間の取引」とは違い、恣意的な取引内容となるケースが想定されます。そこで、税法では取引価額の決定など一定の基準を設けており、会社法でも「自己取引」として、取締役会(取締役会費設置会社においては、株主総会)の承認事項とするなどの制限を設けています。該当する取引がある場合、課題発見の手がかりとして参考にしてください。

会社が役員から資金を借りる

 

Q:会社が役員から運転資金を借りる際に、契約上の留意点はありますか?

 

  • 金銭消費貸借契約書を作成する必要があります。記載内容は、①当事者の氏名、②金額と貸付日、③契約日、④返済方法と返済期限、⑤利率 があれば足ります。

  • 会社と役員が行う取引は会社法の「自己取引」に該当するので、取締役会(取締役会費設置会社においては、株主総会)の承認を受ける必要があります。利率は、「適正な利率」に設定してください。「適正な利率」は、税法上は以下のいずれかとされています。※後述しますが、会社が役員から資金を借りる場合、「適正な利率」より低い場合でも税務上は特に問題となりません。

    1. 会社が他から借り入れて貸し付けた場合、その借入金の利率

    2. 1以外の場合は、貸付けを行った日の属する年に応じた一定の利率(下記URL参照)

国税庁HP: No.2606金銭を貸し付けたとき

 

 

Q:適正利率より高い利率で会社が役員からお金を借りた場合は、税務上はどのような問題がありますか?

 

  • 資金を借りた会社側では、適正利率を超える部分は役員報酬(損金算入)となります。そのため、源泉徴収の問題が生じます。また、通常の役員報酬と適正利率超過分を加えた報酬額全体が、不相当に高額と判断された場合は、高額とされた部分が損金不算入となります。

  • 資金を貸した役員側では、適正な利率による場合は「雑所得」、適正な範囲を超える部分は「給与所得」とされます。また、同族会社の役員が、同族会社から受取る利息収入が20万円以下でも確定申告が必要になります。

 

 

Q:適正利率より低い利率(または無利息)で会社が役員からお金を借りた場合は、税務上はどのような問題がありますか?

 

会社、役員ともに税務上の問題は生じません。

  • 資金を借りた会社側では、経済合理性に基づいて取引することになりますが、低い利率で借りることは会社の経済合理性に合致しており、問題となりません。

  • 資金を貸した役員側では、そもそも経済合理性に基づいて取引する必要はないため、問題となりません。

 

会社が役員に資金を貸す

 

Q:会社が役員に資金を貸す際に、契約上の留意点はありますか?

 

  • 金銭消費貸借契約書を作成してください。記載内容は、①当事者の氏名、②金額と貸付日、③契約日、④返済方法と返済期限、⑤利率があれば足ります。

  • 会社と役員が行う取引は会社法の「自己取引」に該当するので、取締役会(取締役会費設置会社においては、株主総会)の承認を受ける必要があります。利率は、「適正な利率」に設定してください。税法では、以下のいずれかとされています。ただし、福利厚生的な意味合いや少額のケースでは利息をとらなくてもよいとされています。

  1. 会社が他から借り入れて貸し付けた場合、その借入金の利率

  2. 1以外の場合は、貸付けを行った日の属する年に応じた一定の利率

国税庁HP: No.2606金銭を貸し付けたとき

 

 

Q:適正利率より低い利率(または無利息)で会社が役員にお金を貸した場合は、税務上はどのような問題がありますか?

 

  • 資金を貸した会社側では、適正な利率との差額部分が役員報酬(損金算入)となり、源泉徴収の問題が生じます。また、通常の役員報酬と適正利率超過分を加えた報酬額全体が、不相当に高額と判断された場合は、高額とされた部分が損金不算入となります。

  • 資金を借りた役員側では、適正な利率と差額部分が、「給与所得」になります。

 

 

会社が役員から土地を借りる

 

Q:会社が自社の事務所を建設するために、役員から土地を借り受ける場合に、一般的な土地の賃貸借契約と同様に権利金は支払ったほうがよいのでしょうか?

 

権利金の授受が行われている地域では、原則として権利金を支払う必要があります。後述しますが、「相当の地代」を支払うケースや、事前に「土地の無償返還に関する届出書」を税務署に提出する場合は支払う必要はありません。また、借地権の対象となるのは、建物を建てる目的で土地を借り受ける場合であるため、青色駐車場として使用する場合や、資材置き場やモデルルームとして一時的に使用する場合は、権利金を支払う必要はありません。

国税庁HP:No.5730 権利金の認定課税について

 

 

Q:権利金(借地権)はいくらとすべきでしょうか?

 

土地の時価に一定割合(借地権割合)を乗じて算定した価額とします。借地権割合は、郊外にある土地よりも繁華街にある土地のほうが利用価値等を考慮して高い割合に設定されています。借地権割合は、国税庁が公表する路線価図・評価倍率表で確認することができます。

 

 

Q:権利金を支払った場合の会社と役員の課税関係について教えてください。

 

  • 土地を借り受けた会社側では、借地権を計上し税金は発生しませんが、土地と同様に減価償却はできないことになります。

  • 土地を貸した役員側では、受け取った権利金が土地の時価の2分の1を超える場合は「譲渡所得」、2分の1以下である場合は「不動産所得」となります。「譲渡所得」の場合、土地の所有期間によって税率が変わります。通常は、時価の2分の1を超えるケースがほとんどだと思います。

国税庁HP:No.3111 土地を貸し付けて権利金などをもらったとき

 

 

Q:権利金授受の慣行がある地域で、権利金を支払っていなかった場合は、どのような問題がありますか?

 

  • 土地を借りた会社側では、借地権を無償で取得したことになるので、支払うべきであった権利金が受贈益として課税されます。

  • 土地を貸した役員側では、税務的な問題は特にありません。

 

 

Q:権利金に代えて、「相当の地代」を支払えば問題ないとのことですが、「相当の地代」とはどのようなものでしょうか?

 

「相当の地代」とは、土地の時価に対しておおむね年6%程度の金額とされています。また、土地の時価は次のいずれかになります。

  • 通常の取引価額

  • 公示価格

  • 相続税評価額

  • 相続税評価額の過去3年平均

国税庁HP: No.5732 相当の地代及び相当の地代の改訂

 

 

Q:権利金の支払いをせず、「相当の地代」に満たない安い地代を受け取っていた場合、どのような問題がありますか?

 

  • 土地を借りた会社側では、実際に支払っている地代が「相当の地代」に満たない割合に相当する借地権を会社が無償で取得していることになります。そのため、{土地の時価×1-(実際に支払っている地代/相当の地代)}が、受贈益となり課税されます。留意すべき点として、算式中の「土地の時価」は「通常の取引価額」により計算することになります。

  • 土地を貸した役員側では、権利金の譲渡にあたらず、「不動産所得」とされます。

 

 

Q:「土地の無償返還に関する届出書」を提出する場合、権利金の支払いをしなくても問題ないとのことですが、支払う地代は安い金額でも問題ありませんか?

 

  • 土地を借りた会社側では、「土地の無償返還に関する届出書」を提出することで、借地権の認定課税を避けることができます(借地権を無償で取得したことにしない)。そのため、低い地代を設定した場合でも特に問題はありません。

  • 土地を貸した役員側では、経済合理性に基づいた取引とする必要はなく、実際に受け取った地代が「不動産所得」となります。

 

会社が役員から事業用建物を借りる

 

Q:会社が役員から事務所用建物を借りる場合、家賃設定によって税務上の問題はありますか?

 

  • 建物を借りた会社側では、極端に高い家賃でなければ税務上の問題は生じません。極端に高い家賃の場合、通常の家賃と比べて高い部分が役員報酬として扱われるため、源泉所得税の問題が生じます。また、通常の役員報酬と超過部分を加えた報酬額全体が、不相当に高額と判断された場合は、高額とされた部分が損金不算入となります。

  • 建物を貸した役員側では、極端に高い家賃でなければ税務上の問題は生じません。極端に高い家賃の場合、通常の家賃と比べて高い部分は「給与所得」となります。

 

 

会社が役員に住宅を貸す

 

Q:会社が役員に社宅を貸すことを検討していますが、家賃設定によって税務上の問題はありますか?

 

家賃設定は、税務上定められている適正な家賃を目安に設定する必要があります。社宅の床面積により、小規模な住宅とそれ以外の住宅とに分け、一定の算式により計算します。ただし、この社宅が、社会通念上一般に社宅と認められない豪華社宅である場合は、算式の適用はなく、通常支払うべき使用料に相当する額が賃貸料相当額になります。算式による場合、一般的に賃料相場の1~2割程度になると考えられます。具体的な算式は下記URLをご参照ください。

国税庁HP:No.2600 役員に社宅などを貸したとき

 

 

Q:適正な家賃より低い家賃を支払っている、または家賃を支払っていない場合、どのような税金の影響がありますか?

 

  • 社宅を貸した会社側では、適正な家賃と比べて低い部分が役員報酬として扱われるため、源泉所得税の問題が生じます。また、通常の役員報酬と超過部分を加えた報酬額全体が、不相当に高額と判断された場合は、高額とされた部分が損金不算入となります。

  • 社宅を借りた役員側では、通常の家賃と比べて低い部分は「給与所得」となります。

会社が役員から土地を取得する

 

Q:会社が役員から土地を購入したいと考えています。その際に、売買価額をいくらにするかが問題となると聞きましたが、どのように設定すればよいでしょうか?

 

同族会社と役員が取引する場合、「時価」による必要があります。土地の時価には様々な基準がありますが、不動産鑑定士の鑑定評価を取れば、より適切な価格が算定されます。コストや算定に時間がかかるので、一般に公表されている以下のような価格を基準に時価を算定することも可能です。実務上は、路線価を0.8で割り戻した値を時価とみなす場合が多いと考えられます。

  • 国土交通省が公表する公示価格(近くに公示価格がない場合があります)

  • 各市町村が公表する固定資産税評価額(時価の約7割を目安に決定されています)

  • 国税庁が公表する路線価(時価の約8割を目安に決定されています)

 

Q:会社が役員から土地を取得した場合の課税関係について教えてください。

 

  • 土地を取得した会社側では、特に課税関係は発生しません。取得した土地は、減価償却できないので、取得した事業年度以降の税負担は重く感じられます。

  • 土地を売却した役員側では、譲渡益が「譲渡所得」となります(譲渡益=売買価額-(取得価額+譲渡にかかった費用))。土地を所有していた期間によって、「5年を超えるもの」は、「長期」として税率約20%(所得税15%、住民税5%)、5年以下のものは「短期」として税率約39%(所得税30%、住民税9%)が課税されます。また、「総合課税」ではなく、「分離課税」となり、給与所得などと合算されることはありません。

国税庁:土地や建物を売ったとき

 

 

Q:会社が「時価」より低い価額で土地を取得した場合、税務上の問題点について教えてください。

 

  • 土地を取得した会社側では、「時価」に満たない部分が受贈益として課税されます。

  • 土地を売却した役員側では、「時価」の2分の1未満で売却した場合は、「時価」で売却したものとみなし、譲渡益を計算します(受け取る代金が少なくても、時価によって売却したものとみなされます)。所得税法では、「個人が、法人にその所有する資産を時価よりも低い価額で譲渡した場合、その譲渡価額が時価の2分の1未満のときは、時価により譲渡したものとみなす」という、みなし譲渡の規定が存在します。

国税庁: 時価より低い価額で売ったとき

 

 

Q:会社が「時価」より高い価額で土地を取得した場合、税務上の問題点について教えてください。

 

  • 土地を取得した会社側では、「時価」を超える部分が役員賞与として課税されます。役員賞与は臨時的な報酬として損金不算入となります。また、源泉徴収の問題も発生します。

  • 土地を売却した役員側では、「時価」が売買価額として「譲渡所得」が計算され、時価を超える部分は「給与所得」となります。

 

 

会社が役員に土地を売却する

 

Q:会社が役員に土地を譲渡した場合の課税関係について教えてください。

 

  • 土地を売却した会社側では、土地の売買価額と取得価額の差額が売却損益として計算されます。

  • 土地を取得した役員側では、売買金額に購入にかかった費用を加えた金額が土地の取得価額となります。

 

 

Q:会社が「時価」より低い価額で土地を譲渡した場合、税務上の問題点について教えてください。

 

  • 土地を売却した会社側では、原則として、「時価」以外の金額で取引することは認められておらず、「時価」が譲渡価額とみなされて売却益が計算されます。「時価」と実際の売買価額の差額は役員賞与とされ、臨時的な報酬として損金不算入となります。また、役員賞与は源泉徴収の問題も発生します。

  • 土地を取得した役員側では、「時価」に満たない部分の金額は役員賞与として「給与所得」となります。また、低額で譲り受けた土地の取得価額は、「時価」に購入にかかった費用を加えた金額です。

 

 

Q:会社が「時価」より高い価額で土地を譲渡した場合、税務上の問題点について教えてください。

 

会社、役員ともに特に税務上の問題は生じません。

  • 土地を売却した会社側では、特に税務上の問題は生じません。原則として、「時価」以外の金額で取引することは認められておらず、「時価」が譲渡価額とみなされて売却益が計算されます。「時価」と実際の売買価額の差額は売却益ではなく、役員からの受贈益となりますが、益金にかわりはなく影響は及ぼしません。

  • 土地を取得した役員側では、特に税務上の問題は生じません。土地の取得価額は、「時価」に購入にかかった費用を加えた金額です。「時価」と実際の売買価額の差額は役員が会社に無償で与えたものにすぎないことになります。

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