宮城県の最低賃金が1,038円へ引き上げ 中小企業が今すぐ確認すべきポイントと支援策
- 智史 長谷川
- 10月9日
- 読了時間: 4分
令和7年10月4日から、宮城県の最低賃金が時給1,038円に引き上げられます(改定前:973円、+65円)。
過去最大の上げ幅となる今回の改定は、物価上昇を踏まえた「賃上げ促進」の流れを受けたものであり、特に中小企業・小規模事業者にとっては人件費増加への対応と支援制度の活用が急務です。
この記事では、宮城労働局の発表内容をもとに、最低賃金改定の概要と、企業が取るべき実務対応・利用できる支援策をまとめます。
記事要約
宮城県の最低賃金は1,038円に引き上げ(令和7年10月4日発効)
引上げ対応のための助成金・補助金制度が拡充
業務改善・人材育成・DX投資など、賃上げと生産性向上を両立させる支援策が多数
宮城県最低賃金の改定概要
令和7年10月4日から、宮城県内のすべての労働者(正社員・パート・アルバイトを含む)に対し、最低賃金1,038円が適用されます。
これは前年より65円の引き上げ(上昇率6.68%)で、全国的にも大幅な上昇です。
改定前:973円
改定後:1,038円
引上率:+6.68%
発効日:令和7年10月4日
最低賃金には、通勤手当・家族手当・賞与・時間外手当などは含まれません。
また、「鉄鋼業」「電子部品・デバイス製造業」「自動車小売業」など、一部の業種は産業別最低賃金が別に定められています。
自社の賃金が最低賃金を下回っていないか確認を
最低賃金は「時間額」で比較します。社員が日給制・月給制であっても、以下の式で時間当たり賃金に換算し、最低賃金を下回らないか確認が必要です。
日給制の場合 日給 ÷ 所定労働時間 ≧ 1,038円
月給制の場合 月給 ÷ 月平均所定労働時間 ≧ 1,038円
たとえば、月給18万円
・年間労働日260日・1日8時間の場合、
180,000円×12 ÷(260×8)=約1,038.46円
→ 最低賃金をわずかに上回る水準です。
つまり、月給18万円未満の従業員がいる場合、賃金規定の見直しが必要となります。
中小企業が活用できる主な支援制度
最低賃金引き上げに対応するため、政府は多様な助成金・補助金を用意しています。
代表的な支援を以下に整理します。
業務改善助成金
概要:事業場内最低賃金を一定額以上引き上げ、生産性向上につながる設備投資等を行った場合に助成。
助成率:3/4~4/5
助成上限額:30万円~600万円
対象経費例:POSレジ導入、在庫管理システム、国家資格者による業務改善コンサルティング→ 賃上げと同時に生産性向上を目指す企業に最適。
キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)
概要:非正規雇用労働者の賃金を3%以上引き上げた場合に助成。
助成額:1人あたり4万円~7万円(賃上げ率に応じて変動)
特徴:職務評価制度や昇給制度を導入した場合、さらに加算。→ パート・アルバイトの正社員化や待遇改善に取り組む企業におすすめ。
働き方改革推進支援助成金
概要:労働時間の短縮や年休取得促進などの働き方改革を実施し、成果を上げた企業を支援。
助成額:25万円~550万円(成果・賃上げ額に応じて加算あり)
活用例:外部専門家のコンサル導入、労務管理ツールの導入など。
人材開発支援助成金
概要:職業訓練や技能向上のための教育訓練を実施した場合に支援。
助成額:1人あたり最大25万円+訓練経費の最大100%→ DXスキルや専門知識の育成に活用可能。
中小企業省力化投資補助金
概要:人手不足対策として、業務自動化・省力化のための設備投資を支援。
補助上限:最大8,000万円
補助率:1/3~2/3→ カタログから選べる「カタログ型」制度があり、即効性のある投資が可能。
賃上げ促進税制
概要:一定率以上の賃上げを行った場合、賃上げ額の最大45%を法人税から控除可能。→ 助成金と組み合わせることで「支出を抑えた賃上げ」が可能。
どう活かすか:中小企業が今すぐ取るべき対応
1. 自社の最低賃金チェックを行う
正社員・パート・アルバイトを含め、全従業員の時給換算額を計算。
改定後の1,038円を下回る人がいないか確認。
2. 賃金表・就業規則を見直す
改定が必要な場合は、10月4日以降の労働分から適用する。
改定に伴う処遇変更は「キャリアアップ助成金」の対象になる場合あり。
3. 助成金・補助金を組み合わせて活用
「業務改善助成金+ものづくり補助金」など、複数制度の活用が可能。
同一対象設備への重複申請は不可のため、事前確認を。
4. 生産性向上・人材育成を同時に進める
賃上げを単なるコスト増にせず、業務効率化・教育投資による利益率向上へつなげることが重要です。
まとめ
宮城県の最低賃金1,038円は、過去最大の引上げです。中小企業にとって負担感は大きいものの、国の支援制度を組み合わせることで十分に対応可能です。
賃上げは「コスト」ではなく「投資」ととらえ、生産性向上・人材定着・業績拡大のチャンスに変えていきましょう。