top of page
BLOG: Blog2

国税庁が「全税目」でオンライン調査を開始― 令和7年9月から段階的にデジタル化が本格始動 ―

  • 執筆者の写真: 智史 長谷川
    智史 長谷川
  • 2025年10月13日
  • 読了時間: 4分

記事要約


  • 国税庁は2025年9月から、法人・個人を問わずすべての税目で「オンライン調査」を段階的に開始。

  • メール・Web会議・オンラインストレージを活用し、税務調査の効率化を図る。

  • 納税者にとっても「非対面・効率的な調査対応」が可能となる一方、IT環境整備が課題に。



ニュース概要

(出典:『税務通信』第3861号/2025年7月28日)


国税庁は2025年9月より、「ガバメントソリューションサービス(GSS)」導入に伴い、税務調査における連絡や面談、資料の授受などをオンラインで行う「オンライン調査等」を本格的に開始します。


対象は法人税・消費税・源泉所得税・所得税に加え、譲渡所得税や相続税・贈与税など資産税も含めた全税目です。


これまで調査連絡は電話、面談は対面、資料の提出は郵送が基本でしたが、今後は以下のようなオンライン手段が活用されます。


  • メールによる連絡(Microsoft Forms経由で同意登録)

  • Web会議(Teams)による面談

  • オンラインストレージ(PrimeDrive)による資料授受


まず金沢国税局・福岡国税局から試行し、2026年6月までに全国の税務署へ拡大予定です。



中小企業経営者・起業家への影響


① チャンス:調査対応の効率化と時間コストの削減


これまでの税務調査では、調査官の訪問・立会い・郵送資料の準備などに多くの時間を要しました。

オンライン化により、次のような効果が期待されます。


  • 移動・立会いの負担軽減(担当者が全国どこにいても対応可能)

  • デジタルデータのやり取りでスピーディーな回答

  • 担当税理士・顧問会計士との同席も容易(オンライン会議)


特に多拠点展開している企業やリモートワーク中心の事業者にとっては、効率的な調査対応が可能になります。


② リスク:IT環境・情報管理体制の不備によるトラブル


一方で、オンライン調査には新たなリスクも存在します。


  • メール・クラウドを利用するため、情報漏えいリスクが増加

  • 同意手続きやアカウント登録のミスによる通信トラブル

  • データ形式・容量制限などの技術的課題


国税庁は「納税者の同意を得たうえで実施」としていますが、誤送信やセキュリティ不備があれば信頼関係を損なうおそれもあります。


③ 注意点:全納税者が対象に


これまでオンライン調査は調査課所管法人など一部企業に限定されていました。

今後は個人事業主・相続税・贈与税の対象者なども含め、「すべての納税者」がオンライン調査の対象となります。

つまり、これまで「自分には関係ない」と思っていた層にも、オンライン対応の波が及ぶことになります。



経営者が取るべき実務対応(対策)


1. 社内のデジタル環境を整備する


オンライン調査の前提は「安全にデータをやり取りできる環境」です。以下の対策が有効です。


  • セキュリティ対策済みPC・アカウントの管理

  • PDF等の電子帳簿データを整理し、クラウドで共有

  • Web会議・オンラインストレージの社内利用ルールを整備


特に中小企業では、担当者が私用メールやLINEでやり取りするケースも見られます。

今後は公的なビジネスメールアドレスの利用やアクセス権限の明確化が求められます。


2. 税務調査対応マニュアルの更新


オンライン面談・資料提出の流れに合わせて、社内マニュアルや税務調査対応フローを見直すことが重要です。たとえば以下のような点をチェックしましょう。

チェック項目

内容

同意手続きの流れ

Microsoft Formsでの登録手順を把握

Web会議環境

カメラ・マイク・通信品質の確認

資料共有

データ形式・ファイル容量の制限を確認

セキュリティ管理

誰がアップロード・閲覧するかを明確に


3. 顧問税理士・会計事務所との連携強化


オンライン調査では、税理士が同席しやすくなる一方で、「誰がどこまで対応するか」の整理が不可欠です。

資料送付や会議出席など、役割を明確に分担することでスムーズに対応できます。


4. 個人事業主も「メール対応」への準備を


国税庁は調査開始時に「メール利用の意思確認」を行い、同意があれば登録フォームでメールアドレス等を登録します。

特に個人事業主は、プライベートと事業用のメールを分け、ビジネス専用のメールアドレスを用意しておきましょう。



今後の動向


  • 2025年9月:金沢・福岡局から先行スタート

  • 2026年6月:全国で展開予定

  • 将来的には「税務行政DX化」全体の中核へ


オンライン調査の導入は、単なる業務効率化にとどまらず、国税庁が進める「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション(DX)」の一環です。

将来的には、電子帳簿保存制度やインボイス制度と並ぶ、“税務のデジタル基盤”として定着していくでしょう。


その一方で、IT環境整備やリテラシー格差への支援も求められます。特に中小企業においては、「顧問税理士+経営者+経理担当者」が協力し、デジタル調査対応の仕組みを早めに整えておくことが重要です。



まとめ


  • 2025年9月から国税庁が「オンライン調査」を本格導入。法人・個人すべてが対象。

  • 調査はメール・Web会議・オンラインストレージを組み合わせて実施。

  • 納税者の同意を前提に、デジタル化による効率化とセキュリティ対応が求められる。

  • 中小企業は早期にIT環境と内部体制を整備しておくことが肝要。


関連記事

すべて表示
忘年会・納会の費用の非課税の考え方

年末が近づくと、忘年会や納会、年末パーティーを企画する会社も多くなります。 その際によく聞かれるのが、「会社が費用を出したら、従業員に税金はかかるの?」「ビンゴの景品はどう扱うの?」という疑問です。 実は、忘年会そのものの費用と、イベント内で配る景品とでは、所得税の扱いが大きく異なります。 さらに、対象が「全社員」か「役員のみ」かによっても、結論は変わります。 この記事では、忘年会・納会に関する所

 
 
フードバンクへの食品寄附は損金になる?寄附金・廃棄損・広告宣伝費の違いを整理

物価高や社会的支援ニーズの高まりを背景に、企業による「フードバンク」への食品提供が注目されています。 一方で、実務上の疑問として「この食品提供は寄附金になるのか、それとも損金として処理できるのか」という税務上の取扱いです。 本記事では、国税庁質疑応答事例をもとに、 フードバンクへの食品提供について ・寄附金になるケース ・廃棄損として損金算入できるケース ・広告宣伝費として処理できるケース を整理

 
 
成長率・金利論争とは何か? ― 中小企業経営にどんな影響があるのか徹底整理

日本経済新聞(2025/12/2 朝刊) にて、政府の財政運営を巡る「成長率・金利論争」が再び注目されています。 一見すると“国の財政の話”に聞こえますが、実際には 中小企業の資金繰り・借入金利・設備投資・補助金政策・税負担 など、経営に直結するテーマです。 2025年以降、日本は 「金利のある世界」 に戻りつつあります。 金利が上がる時代に、国の財政方針がどう変わるのかは、企業の戦略に無視できな

 
 

​​

Hasegawa CPA Office

​東北/仙台市

Copyright ©  Hasegawa CPA Office All Rights Reserved.

bottom of page