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新・空き家問題を読み解く:2030年、日本の住宅市場に何が起きるのか

  • 執筆者の写真: 智史 長谷川
    智史 長谷川
  • 2025年12月5日
  • 読了時間: 5分

総務省による住宅・土地統計調査では、全国の空き家数が900万戸超に達したことが明らかになりました。空き家率は13.8%、つまり日本の家の7軒に1軒が空き家という状況です。


今回読んだ『新・空き家問題』(牧野知弘 著)では、空き家増加の真因と、これから住宅市場に訪れる「2030年の大変化」が具体的に描かれています。


本記事では、本書で特に印象に残ったポイントを、私自身の視点や考察を交えて整理します。

(引用元:『新・空き家問題』牧野知弘、2025年刊)



【記事の要約】


  1. 空き家は地方だけの問題ではなく、首都圏で爆発的に増える構造が整っている。

  2. 相続、とりわけ「二次相続」の集中が、2030年前後に住宅市場の大転換点を生む。

  3. 今後は“量の確保”よりも“ストック活用”が重要になり、個人も企業も住宅戦略の見直しが欠かせない。



【空き家はなぜ増え続けるのか】


本書で特に強調されているのが、「世代横断空き家問題」です。

高度経済成長期に地方から都市へ移住した世代が郊外に住宅を購入し、さらにその子どもの世代が都心へ移住する――この二重の動きによって、「地方の実家」「郊外の実家」が同時に空き家化していく構造が続いています。


書籍の記述によれば、空き家の約55%は相続が原因です。



私自身も実務の中で、相続による“意図しない不動産の取得”が、個人の資金計画や家族の意思決定に大きな負担を与える場面を見てきました。相続人にとって住む予定のない物件ほど「扱いに困る資産」はありません。



【地方より都市にこそ空き家が多いという現実】


「空き家=地方の問題」というイメージは誤りで、実際には東京都が全国最多の約90万戸の空き家を抱えています。



空き家の絶対数は人口規模に比例するため、都市部における空き家問題はより深刻です。特に今後は高齢者の増加と相続集中により、首都圏での供給増が避けられません。



【マンション空き住戸という“静かなる危機”】


戸建てに比べ「マンションは放置しても劣化が遅い」と思われがちですが、著者はこの考え方に警鐘を鳴らします。


マンションには共用部があります。

排水管のバキューム清掃に協力しない所有者がいると、全体に支障が出る。管理費や修繕積立金の滞納が増えると、長期修繕計画が崩れ、資産価値が低下する。



特に築40年超のマンションは、これから20年の間に倍増し、2042年には約445万戸に達します。空き住戸の増加と高齢化が重なることで、管理不全マンションが急増するという指摘には強い危機感を覚えました。


実際に、管理組合の意思決定が止まり、修繕が進まないマンションも多く存在します。空き家化は外見から見えない形で資産価値を蝕んでいきます。



【2030年、首都圏の住宅市場は「供給過多」に向かう】


本書で最も衝撃的だったのは、2030年前後に空前の相続ラッシュが発生するという指摘です。


・首都圏の65歳以上は905万人

・その約半数が75歳以上の後期高齢者



著者によれば、今後15年間で370万〜413万戸の住宅が相続対象となり、その3割が市場に出るだけで年8万戸


これは新築・中古マンションの供給総数(年間7.6万戸)を上回ります。



つまり、市場は確実に「売り物件の波」に飲み込まれるのです。



【相続税の観点から見ると…】


・一次相続は特例が多く、相続税の負担が軽い

・しかし「二次相続」には特典がなく、納税のため売却が急増しやすい


特に、資金力の乏しい相続人が高額評価の不動産を受け継いだ場合、売却せざるを得ません。

ここから、2030年に向けて首都圏の住宅価格が「買いやすくなる」構造が生まれるというのは、実務的にも大いに納得のいく指摘です。



【住宅政策のギャップ:量の確保からストック活用へ】


国の住宅政策は依然として「新築重視」であり、住宅ローン減税や金利優遇といったインセンティブが続いています。

一方、東京都内だけでも90万戸の空き家が放置されている現実。



本書では、政策の方向性を次のように転換すべきと述べています。


・防災性向上、耐震化

・老朽住宅の除却

・管理不全マンションへの支援

・ストック重視の都市計画


これらは、空き家問題を「社会インフラの脆弱化」という視点で捉え直す上で非常に重要です。



【今回の読書で特に感じたこと(私的考察)】


1. 空き家問題は“個人の問題”であると同時に“国土の問題”


空き家は固定資産税の負担だけでなく、災害時の倒壊リスク、治安悪化、地域コミュニティの衰退にもつながります。

特定地域で事業を行う経営者にとっては、事業活動そのものに直結するテーマです。


2. 住宅市場価格の変化


首都圏の住宅市場価格は上昇していますが、本件の構造変化によって需要と供給のバランスが崩れ、値下がりに転じる可能性があります。そのため、個人が住宅を購入または売却する際に資金収支が大きく影響を受ける点も考慮する必要がありそうです。


3. 不動産業界に属する会社の経営


不動産関連の事業を営む会社にとって、空き家物件が大量に市場に供給されることで、事業戦略を見直す必要が出てきます。空き家に付加価値を付けて値崩れの影響を防ぐ努力が必要かもしれません。また、新築に対する住宅ローン税制などの優遇措置が縮小された場合を想定した準備も検討したほうがいいでしょう。



【まとめ】


『新・空き家問題』は、単なる住宅事情の解説ではなく、2030年以降の日本社会が直面する構造変化を明確に示した一冊でした。


特に印象に残ったのは次の3点です。


・空き家の主因は相続であり、都市部こそ深刻な課題を抱えている

・2030年前後の大規模な二次相続が、住宅市場を一変させる

・今こそ「新築中心」から「ストック活用」へ政策転換すべき


空き家は「社会問題」であると同時に、「家族」「経営」「資産形成」という身近な課題でもあります。

読者のみなさんには、ぜひ自身の家族の未来や相続のあり方を考えるきっかけにしていただければと思います。

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