台風被害を受けたときの所得税の軽減措置とは?【雑損控除と災害減免法の違い】
- 智史 長谷川

- 11月3日
- 読了時間: 4分
近年、地球温暖化の影響で台風の大型化・頻発化が進んでいます。
特に2025年も秋にかけて勢力の強い台風の上陸が懸念されています。
もし自宅や家財が被害を受けた場合、経済的な損失だけでなく、税金の負担も心配になります。
そんなときに活用できるのが、所得税法による「雑損控除」と、災害減免法による「所得税の軽減・免除」です。
この記事では、両制度の仕組みや選択のポイントをわかりやすく解説します。
記事の要約
台風など自然災害で自宅や家財が被害を受けた場合、「雑損控除」か「災害減免法」による軽減が可能。
所得や被害の程度によって、どちらを選ぶかで減税効果が異なる。
国税庁の確定申告書等作成コーナーで、有利な方を自動判定できる。
台風などの災害時に受けられる2つの税の軽減制度
自然災害で住宅や家財が損害を受けた場合、所得税法または災害減免法に基づく軽減措置を利用できます。
両者の概要と違いを整理してみましょう。
所得税法による「雑損控除」とは
生活に通常必要な資産(住宅・家財など)が台風などの災害により損害を受けた場合、次のいずれか多い金額を所得から控除できます。
「損失額 − 所得金額 × 1/10」
「損失額のうち災害関連支出 − 5万円」
ここでの「損失額」とは、被害による損害額から保険金や補償金などを差し引いた金額です。
また、「災害関連支出」とは、住宅の取壊し費用や家財の処分費用など、災害に直接関連してやむを得ず発生した支出を指します。
雑損控除は、その年の所得から控除しきれない場合でも、翌年以降3年間にわたり繰り越して控除することが可能です。
申告時には、領収書など支出を証明する書類の添付が必要です。
災害減免法による「所得税の軽減・免除」とは
次の2つの条件を満たす場合に、所得税の軽減または免除を受けることができます。
被災した年の所得金額が1,000万円以下
損害額が住宅や家財の時価の2分の1以上
所得金額に応じた軽減割合は次のとおりです。
所得金額 | 軽減・免除の内容 |
500万円以下 | 所得税全額免除 |
500万円超〜750万円以下 | 所得税の1/2を軽減 |
750万円超〜1,000万円以下 | 所得税の1/4を軽減 |
被害が大きく、所得が一定以下の世帯では、こちらの制度の方が大きな減税効果を得られる場合があります。
注意:住民税には災害減免法は適用されないので、雑損控除を受ける住民税の申告が別途必要になります。
どちらを選ぶべき?自動判定ツールを活用
確定申告の際、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用すると、「雑損控除」と「災害減免法」のどちらが有利かを自動で判定してくれる機能があります。
例えば、保険金がある場合や被害規模が軽微な場合は雑損控除が有利に、一方で所得が少なく住宅が大きな損害を受けた場合は災害減免法の方が有利になります。
被災後は冷静な判断が難しいため、このツールを使うことでより正確な選択が可能です。
被災直後にやるべき3つのステップ
損害の記録を残す 被害箇所の写真・動画を撮影し、修理見積書などを保存します。
保険金や補償金の確認 支給予定額を確認し、最終的な「損失額」を把握します。
税務上の控除・免除を試算する 確定申告書作成コーナーでどちらの制度が有利か確認し、必要な書類(領収書・見積書・被害証明書など)を準備します。
経営者・個人事業主にとってのポイント
事業用資産(店舗・設備など)の損害は、所得税の雑損控除ではなく「必要経費」や「損失処理」として別の扱いになります。
被災によって一時的に収入が減少した場合、納税猶予や予定納税の減額申請なども検討しましょう。災害時の資金繰りは、税負担軽減と併せて早期対応が重要です。
よくある質問(Q&A)
Q1. 火災保険金を受け取った場合も雑損控除できますか?
A. できますが、保険金で補填された金額を損失額から差し引く必要があります。
Q2. 家の修理費が50万円未満でも控除できますか?
A. 控除額の算定には「5万円を超える災害関連支出」が基準となります。少額でも複数支出があれば合計で対象になる場合があります。
Q3. 申告の締切はいつですか?
A. 通常の確定申告期間(翌年2月16日〜3月15日)に行いますが、被災地域に指定された場合は延長されることがあります。
まとめ
比較項目 | 雑損控除 | 災害減免法 |
対象者 | 被害を受けた全ての納税者 | 所得1,000万円以下の被災者 |
控除・軽減の方法 | 所得から控除 | 所得税額を直接軽減 |
被害の基準 | 生活に必要な資産の損害 | 住宅・家財の時価の1/2以上 |
有利なケース | 中所得層・軽微な被害 | 低所得層・大規模な被害 |
被災時には冷静な判断が難しくなりますが、証拠書類を早めに整え、制度を正しく選ぶことが税負担軽減の鍵です。
不明点は税理士や自治体の税務相談窓口に相談しましょう。
