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IPO一択からの脱却 東証改革と新ルールが示すスタートアップの未来

  • 執筆者の写真: 智史 長谷川
    智史 長谷川
  • 4 日前
  • 読了時間: 3分

記事要約


東京証券取引所は2030年以降、上場から5年を経過して時価総額が100億円未満の企業を上場廃止とする方針を発表した。

小規模な「小粒上場」に歯止めをかけ、成長性を重視する市場改革である。


また経済産業省は、スタートアップに対する投資契約のガイドラインを改定し、IPO(新規株式公開)一択ではなくM&Aやセカンダリー取引も投資回収手段として認める国際標準型のルールへ転換する。



ニュース概要(出典:日本経済新聞2025年7月27日電子版、2025年9月18日朝刊)


日本のスタートアップ市場は「小粒上場」が多く、時価総額40億円未満の企業が4割を占める現状が課題視されている。

東証は維持基準を厳格化し、成長性の乏しい企業を淘汰する狙いだ。背景には、海外投資家から見て魅力に乏しい市場環境を改善する目的がある。

一方、経産省は従来の「IPO努力義務」を見直し、M&Aや株式の二次流通も投資回収手段として認める新ガイドラインを導入する。

これにより、海外投資マネーの呼び込みや、起業家が再挑戦しやすい環境整備を目指している。



経営者や投資家への影響


チャンス

  • 資金調達の選択肢が拡大

    IPOにこだわらず、M&Aやセカンダリー市場を通じた資金回収がしやすくなる。


  • 海外投資家からの資金流入

    契約慣行が国際標準に近づくことで、海外VCやファンドから投資を受けやすくなる。


  • 産業全体の新陳代謝

    成長できる企業に資金が集まり、M&Aを通じた事業強化の機会が広がる。


リスク

  • 上場維持基準の厳格化

    成長スピードが遅い企業は上場廃止のリスクに直面する。


  • 投資家からの視線が厳格化

    非財務情報や海外向け情報開示への対応が求められ、負担が増える。


  • M&A圧力の高まり

    自社単独での成長が難しい企業は、大手に吸収される可能性が高まる。



経営者が取るべき対策


  1. 成長戦略の再定義

    IPOはゴールではなくスタート。事業の持続的成長と収益モデルの強化が必須。


  2. M&Aの視野に入れた経営

    自社が「買収する側」になるのか、「買収される側」としてシナジーを狙うのか、早期から戦略を描くことが重要。


  3. 海外投資家への情報発信

    英文開示やサステナビリティ情報を整備し、グローバル資本市場に対応する体制づくりを進める。


  4. 契約リスクの把握

    従来の「投資金返還義務」など不利な契約条項が排除される方向だが、個別契約内容を確認し、法務面での備えを強化する。



今後の動向


  • 東証改革は2030年以降に本格適用。今後5年で中小企業は「成長の見える化」を迫られる。

  • 経産省の新ガイドラインは2025年9月末にも公表予定。投資契約の国際化が加速し、海外マネーの呼び込みが本格化する。

  • M&A市場の拡大に伴い、スタートアップと企業の連携・統合が進むと予測される。



まとめ


今回の東証改革と経産省の新ルールは、スタートアップや中小企業にとって「IPO至上主義」から脱却する大きな転換点となる。

資金調達・成長戦略・出口戦略の多様化が進む一方、上場維持には厳しい成長要求が課される。

企業経営者は、これを単なるリスクではなく、自社を磨き上げるチャンスと捉える必要がある。

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