年収の壁はどう変わった?最新の所得税・社会保険料改正まとめ
- 智史 長谷川

- 2025年9月9日
- 読了時間: 4分
「パートの収入を106万円に抑えている」
「子どものアルバイト代を103万円以下に調整している」
――こうした声をよく耳にします。いわゆる「年収の壁」の問題です。
これまで世帯の手取りを守るために、多くの家庭や事業主が就業調整を行ってきました。
しかし、2025年の税制改正と年金制度改革法により、この“壁”の一部が見直されました。
企業経営者にとっても、従業員の働き方や人材確保に直結するテーマです。
本記事では、「年収の壁はどう変わったのか」を整理し、中小企業や個人事業主が押さえておくべきポイントを解説します。
記事要約
所得税の「103万円の壁」と「150万円の壁」が見直され、課税開始ラインが160万円に引き上げられた。
社会保険料の「106万円の壁」が撤廃され、短時間労働者も条件を満たせば厚生年金・健康保険に加入できるようになった。
「130万円の壁」は存続しており、被扶養配偶者の就業調整問題は引き続き課題。
本文
年収の壁とは?
年収の壁とは、パートやアルバイトなどで一定の収入を超えると税金や社会保険料の負担が急に増え、手取り額が減少する現象を指します。代表的な壁は以下の4つです。
103万円の壁(所得税)
150万円の壁(配偶者特別控除)
106万円の壁(社会保険料:厚生年金・健康保険)
130万円の壁(社会保険料:国民年金・国民健康保険)
所得税に関する改正
本人の壁(103万円) ※壁の重要性低
従来:年収103万円を超えると所得税が課税。
改正後:課税開始が160万円超に引き上げ。
扶養者の壁(103万円) ※壁の重要性中
従来:子ども等の年収103万円超で扶養控除が使えなくなる。
改正後:基準が123万円超に変更。
150万円の壁(配偶者特別控除) ※壁の重要性低
従来:年収150万円超で控除が減少。
改正後:160万円以下なら満額控除。
所得税 壁改正のイメージ

(出典:税務通信DB No.3852【所得税編】)
社会保険料に関する改正
106万円の壁(厚生年金・健康保険) ※壁の重要性大
従来:短時間労働者が、年収106万円以上+一定条件で加入義務。
改正後:賃金要件が撤廃され、短時間労働者でも週20時間以上・2か月超勤務などの条件を満たせば加入対象に。
企業規模要件の撤廃(段階的)
現行:従業員51人以上の事業所が対象。
改正後:2025年から段階的に縮小し、2045年には完全撤廃。
130万円の壁 ※壁の重要性大
配偶者が扶養内にいる場合の壁は存続。今後、第3号被保険者の在り方が検討課題。
社会保険料 壁改正のイメージ

(出典:税務通信DB No.3858【社会保険料編】)
注意点 106万円、130万円の壁に使用する収入の範囲の違い
106万円は基本給や諸手当(職務手当・資格手当など)の「所定内賃金」だけ含めて判定する一方、130万円の壁は交通費・家族手当・残業手当・ボーナス(賞与)、さらに給与以外の事業所得や不動産所得など「収入全体」で判定します。
含める収入(主なもの) | 含めない主な収入 | |
106万円の壁 | 基本給、諸手当(職務・資格など) | 通勤費、残業代、ボーナス、家族手当、慶弔金など |
130万円の壁 | 基本給、全手当(通勤費・残業代・家族手当含む)、ボーナス、その他収入 | ― |
課題に対する活かし方
経営者の視点
従業員が「壁」を気にして労働時間を減らす動きは、人手不足の要因でした。改正により、労働時間の柔軟な調整がしやすくなります。採用やシフト管理の場面では、従業員に制度の変化を説明し、安心して働いてもらう工夫が重要です。
家庭の視点
配偶者控除・扶養控除の基準が緩和されたことで、子どものアルバイトや配偶者の就労の幅が広がります。ただし、130万円の壁は残るため、今後も就業調整を行う家庭は多いと予想されます。
将来への備え
短時間労働者が厚生年金に加入できることは、将来の年金受給額増加に直結します。目先の手取り減少だけでなく、老後の生活設計も考慮した働き方が求められます。
まとめ
所得税の課税開始ラインは大幅に引き上げられたが、扶養親族がいる場合は123万円を引き続き意識せざるを得ない。
社会保険料の「106万円の壁」は撤廃され、短時間労働者も広く加入対象に。
一方で「130万円の壁」は存続しており、今後の制度見直しに注目が必要。
中小企業経営者にとっては、「従業員が安心して働ける環境を整える」ことが、人材定着や採用力強化につながるという視点が不可欠です。
