円建てステーブルコイン「JPYC」発行へ ― 仮想通貨との違いと中小企業への影響
- 智史 長谷川

- 8月21日
- 読了時間: 3分
記事要約(出展:日本経済新聞 2025年8月20日配信記事)
金融庁はフィンテック企業JPYCを資金移動業者に登録し、2025年秋にも日本初の円建てステーブルコイン「JPYC」が発行される見通しとなりました。
これにより、国内外での決済・送金の即時化やコスト削減が期待される一方、規制や競争環境の変化による課題も見込まれています。
ニュース概要
発行主体:JPYC(東京・千代田)
通貨価値:1JPYC=1円、預金や国債で裏付け
仕組み:改正資金決済法(2023年施行)に基づき、銀行・信託会社・資金移動業者が発行可能
用途:企業間決済、国際送金、貿易決済、個人間送金
ビジネスモデル:手数料収入ではなく、裏付け資産である国債の金利収入
市場背景:世界のステーブルコイン市場は約37兆円規模に拡大
仮想通貨との違い
価格の安定性
仮想通貨(ビットコインやイーサリアム):市場の需給で価格が大きく変動。投機対象になりやすい。
ステーブルコイン(JPYCなど):円やドルに1対1で連動し、価格が安定。決済や送金に適する。
法的位置づけ
仮想通貨:資金決済法上は「暗号資産」として定義。
ステーブルコイン:2023年改正資金決済法で「通貨建て資産」と定義され、銀行・信託会社・資金移動業者が発行できる仕組み。
実用性
仮想通貨:価値保存・投資の手段として利用。日常決済には不向き。
ステーブルコイン:送金、決済、貿易取引などビジネスユースを想定。
信頼性
仮想通貨:価格変動リスクが高く、企業会計上の評価が難しい。
ステーブルコイン:裏付け資産(預金・国債)と規制に基づく監査体制があるため、会計処理もしやすい。
中小企業や起業家にとっての影響
チャンス
送金コスト削減と即時決済
従来の銀行振込に比べ、送金手数料が低減する可能性。資金繰り改善に直結。
(消費者がPayPayなどで支払いをした場合、受け取った店舗はこの資金をすぐに仕入れなどに使うことはできない)
資金効率の向上
電子マネーとは異なり、受け取ったステーブルコインを即時利用可能。
海外ビジネスの強化
円建てで国際取引が可能になり、ドル依存からの脱却や為替リスク軽減につながる。
課題
規制強化・対応コスト
マネーロンダリング防止や本人確認(KYC)対応が必須。導入コストが発生。
競合の登場
今後、中央銀行デジタル通貨(CBDC)が普及すれば、民間発行のステーブルコインのシェアが低下する可能性。
信用リスク
発行主体や運営体制に依存する面もあり、規制変更時には影響を受けやすい。
影響に対する対策
決済手段の多様化:銀行振込・電子マネーと併用し、JPYCを試験的に導入。
資金繰りの最適化:即時決済によるキャッシュフロー改善を経営計画に反映。
リスク管理:会計処理や内部統制の整備を進め、万一の規制変更や市場変動に備える。
今後の動向
JPYCは初期に100億円規模の発行から始め、将来的に1兆円規模を目指す。
金融庁と協議し、1回の取引上限(現行100万円)の緩和も検討中。
日本がステーブルコイン規制の先進国となることで、アジア市場の国際決済ハブとしての役割拡大が期待される。
まとめ
仮想通貨が「投資対象」なのに対し、ステーブルコインは「決済インフラ」としての側面が強く、安定性と即時性に優れています。
円建てステーブルコイン「JPYC」の登場は、中小企業にとって コスト削減・資金繰り改善・国際ビジネス拡大 のチャンスをもたらす一方、規制対応や信用リスクも考慮が必要です。
ただし、このような新しいサービスの動きを知っておくと、状況の変化に応じて、いち早く自社で導入することを可能にします。
