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チャーリー・マンガーの金言に学ぶ:「より良く考える」ための思考法と人生訓

  • 執筆者の写真: 智史 長谷川
    智史 長谷川
  • 2 日前
  • 読了時間: 6分

本記事は、ピーター・D・カウフマン編『チャールズ・T・マンガーの金言』(日経BP、貫井佳子訳)をもとに、ウォーレン・バフェットの生涯のパートナーであるチャーリー・T・マンガーが語った講演内容や哲学を整理したものです。


マンガーが残した言葉は、投資理論を超え、「どう生き、どう考えるか」という人間の根本に迫ります。

彼の思考法は、経営や人生のあらゆる意思決定に通じる“普遍の原理”です。



記事要約


  1. 「能力の輪」――自分が理解できる範囲で勝負することの重要性

  2. 「逆方向の思考」――失敗の原因を取り除くことが成功への近道

  3. 「知恵を磨く義務」――生涯にわたる学びが最大の防御となる


1. チャーリー・マンガーとは何者か


チャールズ・T・マンガー(1924–2023)は、ウォーレン・バフェットと共にバークシャー・ハザウェイを築き上げた“もう一人の天才投資家”です。


1964年、バフェットが経営権を握った時、同社の時価総額はわずか1,000万ドルでした。そこから60年足らずで1,350億ドル超へと成長――その裏にはマンガーの論理的かつ哲学的な思考がありました。


バフェットはこう語ります。


「チャーリーは、どんな案件でもこの世の誰よりも的確に分析し評価することができる。」



2. 「能力の輪」——自分の理解できる範囲でのみ行動せよ


マンガーの代表的な概念が「Circle of Competence(能力の輪)」です。

人はそれぞれ理解できる領域を持ちますが、それを超えて行動すると、判断を誤る危険が増します。


「他人が得意なゲームに参入するのではなく、自分が勝てる領域でプレイすべきだ。」


彼は自らの“理解できない分野”を明確に認識していました。

たとえば、ハイテク産業への投資を避けた理由は、「自分には向いていない」と認めたからです。


「私とウォーレンはハイテクには強みを持たない。だから投資しない。それが賢明な選択だ。」


中小企業経営にも通じます。

得意でもない事業や新分野に安易に手を出すより、自社の強みを磨く方がよい。

“できること”と“できないこと”を正確に区別することが、戦略の第一歩です。



3. 「波乗り」モデル——時代の波を見極めよ


マンガーは、技術革新による「競争による破滅(destruction by competition)」の危険を語りました。

馬車用ムチを作る工場が、自動車の登場によって一夜にして時代遅れになる――これが彼の例えです。


「技術が進歩すると、古い産業は波に飲まれる。しかし新しい波を正しく捉えた者は、長い距離を進むことができる。」


マイクロソフトやインテルのような企業は、まさに波に乗った例です。


しかし、マンガーとバフェットは「自分が波を理解できないなら、乗らない」と判断しました。

投資も経営も、“自分が理解できる波”だけに集中することが重要なのです。



4. 「多重メンタルモデル」——複数分野の知を結びつける


マンガーの投資手法は、財務分析だけにとどまりません。

彼は心理学・数学・工学・生理学・歴史学など、あらゆる学問の原理を“思考の道具”として活用しました。

このアプローチを彼は「Multiple Mental Models(多重メンタルモデル)」と呼びます。


「人は一つのハンマーしか持たなければ、すべての問題を釘に見てしまう。学問を横断して考えることが、複雑な現実を正しく理解する鍵である。」


これは現代の経営にも極めて実用的です。

財務・マーケティング・心理・テクノロジーなどを横断的に考える経営者ほど、正しい判断を下せます。



5. 「逆方向から考える」——失敗を避ける思考法


マンガーが繰り返し説いたのが「反転思考(Inversion)」です。


「どうすれば成功するかではなく、どうすれば失敗するかを考えよ。」


成功を追いかけるよりも、失敗の原因を避ける方が容易で確実。

彼はこれを「逆方向から問題に取り組む」ことと呼びました。


「視点を反対側に置けば、より良い答えにたどり着く。」


たとえば経営であれば、「どうすれば会社が潰れるか」を考え、それを一つずつ排除していく。

怠惰、過剰投資、傲慢、不誠実――これらを避けるだけでも成功に近づくというのがマンガー流です。



6. 「誠実と信頼」——敬意を持てる人と働く


マンガーは人間関係の重要性についても繰り返し述べています。


「尊敬できない人の下で働くな。敬意を抱ける人と共に働くことで、より良い人生を送れる。」


彼は、若いころから「信頼できる人物を見極め、その人たちとだけ関わる」ことを実践しました。

誠実に約束を守り、批判を避け、相手に敬意を払う。その積み重ねが長期的な成果をもたらすのです。



7. 「誤判断の心理学」——人間は非合理的である


マンガーの講演で最も有名なのが「誤判断の心理学(Psychology of Human Misjudgment)」です。

彼は、人間の行動を狂わせる心理的バイアスを20以上挙げました。

代表的なものをいくつか紹介します。

バイアス

内容

経営への影響

一貫性の欠如を避ける傾向

自分の判断を変えるのを嫌う

誤った方針を修正できず損失拡大

損失回避バイアス

損を強く恐れる

不採算事業をやめられない

過大自己評価

自分の能力を過信する

過剰投資・過剰リスクを取る

社会的証明

多数派に従いたがる

同業他社の真似ばかりする


「人は10ドルを得た喜びより、10ドルを失う痛みを強く感じる。この“損失の痛み”が、誤った意思決定を生む。」


自分の心理的傾向を理解し、あらかじめ冷静なルールを設けておく。それがマンガー流の「合理的防御策」です。



8. 「知恵を磨くことは道徳的義務」


マンガーは知識を「武器」ではなく「道徳的な義務」と捉えていました。


「知恵を身につけることは道徳的な義務だ。それを果たすには、生涯にわたって学び続けなければならない。」


彼はハーバード大学での講演で、次のように述べています。


「毎日、少しだけ賢くなって家に帰ること。それを長年続ければ、驚くほどの成果が得られる。」


学ぶことは単なる自己満足ではなく、社会への貢献でもある。経営者が知識を深めるほど、社員・顧客・社会に対してより良い意思決定ができる。

これがマンガーの信念でした。



まとめ:マンガー流「思考の基本原則」

原則

内容

① 能力の輪を守る

自分の理解できる範囲で行動する

② 波を見極める

技術革新や社会変化を正しく捉える

③ 逆方向から考える

失敗の原因を避ける

④ 心理の罠を理解する

感情に支配されない判断を行う

⑤ 学び続ける

毎日少しだけ賢くなること

⑥ 敬意と誠実を重んじる

信頼が最大の資産である



試してみよう(実践へのヒント)


  1. 「自分の能力の輪」を紙に書き出す 理解できる分野・できない分野を整理し、無理な拡張を避ける。

  2. 「逆方向のチェックリスト」を作る 「会社が倒産する原因」「投資で失敗する理由」をリスト化し、日々確認する。

  3. 毎日30分、新しい分野を読む 心理学・歴史・科学など、異分野の知識を組み合わせて考える習慣を持つ。

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