複数の会社から給与を受け取る場合の社会保険手続きガイド
- 智史 長谷川
- 6月30日
- 読了時間: 4分
近年、副業やダブルワークを選ぶ人が増えています。
しかし、「複数の勤務先から給与をもらっているけど、社会保険ってどうなるの?」という質問は意外と多いもの。
社会保険(健康保険・厚生年金)の手続きは、勤務先の数や働き方によって大きく異なります。
本記事では、複数の勤務先がある場合の社会保険の取り扱いや手続き、算定基礎届・月額変更届の実務まで、ポイントを絞って解説します。
出典:日本年金機構 複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き
記事の要約
複数の会社で社会保険の加入要件を満たす場合、主たる事業所を選び「被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」が必要
標準報酬月額は給与を合算して決定し、保険料も按分される
算定基礎届・月額変更届の提出は各事業所で自社分のみ記載し、選択事業所を管轄する年金事務所へ提出
具体的な手続きポイント
社会保険の加入要件と主たる事業所の選択
複数の勤務先がある場合、まず重要なのはそれぞれの勤務先で社会保険の加入要件(週の所定労働時間・賃金・学生かどうか等)を満たしているかを確認することです。
どちらも加入要件を満たさない:加入不要
一方のみ満たす:満たす事業所のみ加入
両方満たす:主たる事業所の選択と「二以上事業所勤務届」の提出が必要
二以上勤務者の手続きの流れ
主たる事業所の選択 どちらを「主たる事業所」とするかは、本人が選びます。
「被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」の提出 複数の勤務先で加入要件を満たしたことが分かってから10日以内に、日本年金機構へ提出します。
標準報酬月額の決定 両社の給与を合算して標準報酬月額が決定されます。
保険料の按分・納付 給与の比率に応じて、各社が按分した保険料を納めます(例:A社30万円、B社10万円 → 保険料合計が4万円の場合、A社3万円、B社が1万円)。
決定通知書の送付と給与控除 「二以上事業所勤務被保険者標準報酬決定通知書」が各事業所に送付されます。記載された保険料に基づき給与から控除します。
算定基礎届の取り扱い
年1回(7月)提出する算定基礎届も、通常の被保険者とは異なる対応が必要です。
各事業所は「自社の報酬額のみ」記載
提出先はすべて選択事業所を管轄する年金事務所
提出後、合算後の標準報酬月額が決定され、保険料も合算額に基づき各事業所の報酬割合で決定
※一般用の算定基礎届とは別に、二以上勤務者用の届出様式が各事務所へ送付されます。
※通常送付される算定基礎届(一般被保険者用)には、二以上勤務者は記載しません。
月額変更届の取り扱い
報酬に固定的変動があった場合は、随時改定(いわゆる「月変」)を行います。
各事業所単独で2等級以上の変動があった場合:提出が必要
合算では2等級変動していても、各社単独で満たさなければ提出不要
逆もまた然り(単独で2等級変動 → 提出)
改定後には、標準報酬月額と按分額の変更通知が届くため、給与計算ソフト等の設定変更が必要です。
実務で注意すべきポイント
届出は選択事業所を管轄する年金事務所に統一して提出
保険料の控除額や給与計算のタイミングにも注意が必要
書類不提出や虚偽申告には罰則(懲役または罰金)もある
よくある質問(FAQ)
Q:手続きは本人が行うのですか?
A:基本的には本人が行いますが、会社側も内容を理解し、必要な情報提供や給与処理の連携が必要です。
Q:短時間勤務でも加入対象になりますか?
A:勤務時間や月収、学生か否か、企業規模によって異なります。詳細は各社の人事担当か年金事務所へ確認しましょう。
Q:副業を始めた場合、すぐに届出が必要ですか?
A:副業先で加入要件を満たした場合、10日以内の届出が必要です。早めの対応を心がけましょう。
まとめ
複数の勤務先で社会保険の加入要件を満たす場合には、
「被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」の提出
「社会保険料の按分」
「算定基礎届・月額変更届の適切な処理」
が非常に重要です。
少しでも不安があれば、社会保険労務士や年金事務所に早めに相談しましょう。