海外サービス利用時に注意!「リバースチャージ方式」とは?仕組み・会計処理・対応ポイントを徹底解説
- 智史 長谷川
- 7月2日
- 読了時間: 5分
Meta広告やshopfyなど、海外のデジタルサービスを使う機会が増えた現代。
実は、こうした取引には「リバースチャージ方式」という特別な消費税制度が適用される場合があります。
知らずに処理を間違えると、税務調査で指摘されることも…。
本記事では、制度の仕組みから会計処理、注意点までわかりやすく解説します。
※なお、2025年4月から開始されたプラットフォーム課税については別記事で紹介します。
(参考)国税庁 国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係について
記事の要約
リバースチャージ方式とは、サービスの受け手(日本の事業者)が消費税を申告・納税する仕組み。
対象は主に「国外事業者からの事業者向けデジタルサービス」。
インボイス制度との関連や、判断の分かれるグレーゾーンも要注意!
リバースチャージ方式とは?
通常、国内取引では「売り手」が消費税を請求し、国に納税します。しかしリバースチャージ方式ではその逆。サービスの受け手である「日本の事業者」が、代わりに消費税を納める仕組みです。
適用されるケース
事業者向け電気通信利用役務の提供
国外事業者が日本の事業者向けに提供するインターネット広告配信、クラウドサービス、オンラインソフトウェア利用料などが該当します。
例:Meta広告、shopfy、agoda(宿泊施設側)など。
特定役務の提供
国外の芸能人やスポーツ選手が日本国内でイベントや公演を行う場合など。
どうしてこの制度が必要なのか?
2015年に制度が導入された背景には、「デジタルサービスのグローバル化」と「税の公平性」があります。
従来の仕組みでは、国外の企業に対して日本の消費税を課すことができず、国内企業との競争上不利となるケースも。
これを是正するためにリバースチャージ方式が整備されました。
会計処理・仕訳の例
例:Meta広告 100,000円(税込)
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
広告宣伝費 | 100,000円 | 普通預金 | 100,000円 |
仮払消費税 | 10,000円 | 仮受消費税 | 10,000円 |
※仮払・仮受が相殺され、実質的に納税負担はなし。ただし、課税売上割合が95%未満の場合は仕入税額控除が制限される可能性があります。
対象となる「事業者向け電気通信利用役務の提供」は?
電気通信利用役務の提供
インターネット等を介して提供される次のようなデジタルサービスを指します。
対象取引の例:
クラウドサービス(AWS、Google Workspace)
動画配信・音楽配信(YouTube Premium、Spotify)
オンライン英会話
ネット広告配信(Meta広告)
非該当取引の例:
ソフトウェア制作の請負
海外資産管理・運用(ネットバンキング等)
電話・インターネット回線そのものの提供

事業者向けか、消費者向けかの違い
区分 | 事業者向け ★リバースチャージ | 消費者向け |
対象 | 業務利用前提 | 事業者以外でもサービスを受けられる(個人利用) |
例 | 法人契約の広告やソフト | 電子書籍、動画など |
消費税の納税義務者 | サービスを受けた国内事業者(リバースチャージ方式) | サービスを提供した国外事業者(国外事業者申告納税方式) |
仕入税額控除 | 国内事業者が仕入税額控除を受けられる(課税仕入と同様に処理) | 原則として消費者は仕入税額控除の対象外 |
インボイス必要? | 不要(リバースチャージの対象である旨の記載必要) | 仕入税額控除を受けるには、国外事業者がインボイスの発行必要 |
具体的な判定例(私見であり、実際は契約時に取引条件などを確認する)
Dropbox 個人・法人を問わず誰でも申し込み可能なクラウドストレージサービスであり、サービスの性質上、利用者が事業者に限定されていない →消費者向け
Google Workspace 法人・事業者向けの機能が充実していますが、利用者を事業者に限定していない →消費者向け
Canva 一般の人も利用できるサービスであり、利用者が事業者に限定されていない →消費者向け
アゴダ 一般消費者が宿泊予約をする場合、消費者向け、一方、ホテルや宿泊施設がアゴダに掲載料や広告料を支払う場合は、事業者向け
「事業者向け」とHPに書いてあっても、個人が申し込める場合は“消費者向け”とみなされることがあります。
リバースチャージ方式の対象事業者とは?全ての事業者が対象ではない。
対象になる事業者
原則課税(一般課税方式)
課税売上割合が95%未満(非課税売上が多い法人など)
対象外の事業者
簡易課税を選択している事業者
課税売上割合が95%以上(経過措置により免除)
免税事業者(そもそも消費税申告義務なし)
⇒中小企業ではこちらの事業者が多いので、リバースチャージ対象外、仕入税額控除も受けられないケースが多い
多くの中小企業者の場合(リバースチャージ方式対象外の事業者)
事業者向け電気通信利用役務 → 仕入税額控除×
消費者向け電気通信利用役務 → 国外事業者がインボイス登録事業者であれば、仕入税額控除〇
消費者向け電気通信利用役務(プラットフォーム課税対象) → 特定プラットフォーム事業者を介して取引を行う場合、プラットフォーム事業者からインボイスを入手して仕入税額控除〇
インボイス制度との関係
リバースチャージ対象の取引は、インボイス発行不要
ただし、帳簿上に「リバースチャージ対象」の旨を記載する必要あり
消費者向けで仕入税額控除を受けるには、登録国外事業者からの適格請求書が必要
よくある質問(FAQ)
Q. 個人事業主でもリバースチャージは必要?
A. 原則課税を選択し、かつ課税売上割合が95%未満なら対象となります。
Q. 仕入税額控除できないのはなぜ?
A. 非課税売上が多いと、消費税の控除が制限されるためです。
まとめ
リバースチャージ方式は、国外事業者からのデジタルサービスに対して、日本の事業者が消費税を申告・納税する制度です。
適用対象、事業者の区分、会計処理、インボイス制度との関連など、確認すべきポイントは多岐にわたります。
制度を正しく理解し、経理処理のミスや申告漏れを防ぎましょう。