日本政策金融公庫からの融資を成功させるポイント
- 智史 長谷川
- 9月29日
- 読了時間: 4分
「資金調達は経営の命綱」と言われるほど、中小企業や個人事業主にとって融資は重要です。
特に創業期や事業拡大のタイミングでは、日本政策金融公庫(以下「公庫」)の融資制度を利用するケースが多くあります。
しかし、ただ申請すれば融資が下りるわけではありません。
公庫の融資を成功させるためには、しっかりとした準備とポイントを押さえることが欠かせません。
本記事では、公庫融資を検討する経営者や起業家が、実際に「どうすれば成功率を高められるか」を具体的に解説します。
(参考)
手続きの流れ_小規模事業者向け:https://www.jfc.go.jp/n/finance/flow/goriyou.html
創業計画書の書き方:https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/business-plan/
インターネット申込案内:https://www.jfc.go.jp/n/service/apply.html
記事の要約
公庫融資を成功させるカギは「事業計画書の具体性」と「返済可能性の説明力」にある
融資担当者は「数字」だけでなく「経営者の姿勢と行動」を見ている
最新のツールやクラウド会計を活用すると、融資申請の説得力が格段に増す
本文
公庫融資とは?
日本政策金融公庫は、政府系の金融機関であり、中小企業や個人事業主、創業者向けに低利・長期の融資を行っています。特に以下のようなニーズに対応しています。
創業時の運転資金・設備資金
新規事業展開や成長投資
コロナ禍や災害による一時的な資金繰り支援
銀行融資に比べて利用しやすく、創業直後でも申請できるのが特徴です。
融資成功のポイント
1. 事業計画書の質がすべてを左右する
公庫の融資審査では、担保や保証よりも「事業計画の実現可能性」が重視されます。
なぜこの事業をやるのか(動機・ビジョン)
どのように収益を上げるのか(ビジネスモデル)
どれくらいの利益が見込めるのか(数字計画)
これらを論理的かつ具体的に説明できることが重要です。単に「売上が伸びる予定」ではなく、「市場規模・顧客層・販売方法」を根拠とセットで示す必要があります。
2. 資金使途を明確にする
「何のために資金を使うのか」が不明確な申請は通りにくくなります。
設備投資 → 見積書やカタログを添付
運転資金 → 仕入・人件費・広告費などを明細化
借換資金 → 返済計画と併せて説明
資金の流れを数字と資料で裏付けることで、融資担当者の安心感につながります。
3. 経営者の信頼性が審査の大きな要素
公庫の担当者は「経営者本人の資質」を重視します。面談で見られるポイントは次の通りです。
経営への覚悟やビジョンがあるか
数字に対する理解度(損益・資金繰りを説明できるか)
誠実さや実行力が感じられるか
事業計画が完璧でも、説明できなければ「本当に大丈夫か」と疑念を持たれます。練習して自信を持って臨むことが大切です。
4. 最新のツールを活用する
公庫の融資は昔ながらの紙資料提出も可能ですが、今はクラウドやデジタルを活用する方が効率的です。
会計データをクラウド連携し、数字の信頼性を高める
ExcelやGoogleスプレッドシートで損益予測をグラフ化
顧客獲得の実績をSNSやECのデータで補強
これにより「現代的で透明性の高い経営」をアピールでき、融資担当者に好印象を与えられます。
事例紹介:飲食店の創業融資
ある飲食店のオーナーは、開業資金として公庫融資を申請しました。
準備不足で失敗した例→ 「売上は伸びるはず」と曖昧な計画書で申請。資金使途も「店舗改装費」としか書かず、見積書もなし。結果、不承認に。
成功した例→ 立地の調査データ、客単価のシミュレーション、SNSフォロワー数を根拠に集客予測を提示。資金使途も見積書付きで具体的に説明。結果、希望額満額の融資を獲得。
この差は「数字と根拠」を用意できたかどうかに尽きます。
創業計画書書式

よくある質問(Q&A)
Q1. 赤字でも融資は受けられますか?
A. 受けられる可能性はあります。赤字の理由が一時的であり、改善計画が具体的であれば承認されるケースもあります。
Q2. 創業前でも申請できますか?
A. はい。公庫は「創業融資」に強みがあり、事業計画書と自己資金があれば可能です。
Q3. 融資額はどの程度が妥当ですか?
A. 売上計画と返済可能性に基づき、「月商の3〜6か月分程度」が目安です。
補足:ここでつまずきやすいポイント
「自己資金ゼロ」での申請は通りにくい
根拠のない売上予測は逆効果
融資額は大きければよいのではなく、返済可能額を基準に設定する
まとめ
公庫の融資を成功させるには、 「計画の具体性」×「経営者の信頼性」×「数字の裏付け」 が不可欠です。最新のクラウド会計やデータ分析を活用すれば、より説得力ある申請ができます。
資金調達は事業を成長させる大きなチャンスです。準備を怠らず、確実に成功につなげましょう。
(参考)国民生活事業と中小企業事業の違い
比較項目 | 国民生活事業 | 中小企業事業 |
融資対象 | 小規模事業者・個人事業主 | 資本金1,000万円以上や従業員20人以上の中小企業 |
平均融資額 | 約600万~1,000万円 | 約1億円 |
担保・保証 | 無担保・無保証が多い | 担保・保証が必要なケースが中心 |
主な用途 | 創業、運転資金、教育ローンなど | 設備投資・長期資金など |