金融機関の心をつかむ「事業計画書」の作り方
- 智史 長谷川
- 6月23日
- 読了時間: 4分
「銀行に事業計画書を出したけど、反応がいまいちだった…」
「融資の審査がなかなか通らない」。
中小企業や個人事業主が資金調達でつまずく大きな原因のひとつが、“伝わらない事業計画書”です。
事業に自信はあっても、それを数字と説得力で語るのは簡単ではありません。
この記事では、金融機関が「支援したい」と思える事業計画書の作り方を、ポイントや実例を交えてわかりやすく解説します。
※本文中に出てくる事例は架空の事業者です。
記事の要約
金融機関が重視するのは「実現可能性」と「数字の裏付け」
7つの構成要素で「読む人に信頼感を与える」計画書を作成
資金調達の目的と返済計画が明確であることがカギ
金融機関が重視するポイントとは?
なぜ「事業計画書」が重要なのか?
金融機関にとって、事業計画書はあなたのビジネスの「信用スコア表」です。特に新規融資や創業時の資金調達では、以下のような観点から審査が行われます。
評価ポイント | 審査の視点例 |
実現可能性 | 顧客の獲得見込み、市場の根拠 |
経営者の能力 | 経歴、資格、過去の実績 |
数字の整合性 | 売上予測、利益計画、資金繰り表など |
返済能力 | キャッシュフロー、利益率、返済計画 |
リスクの把握と対策 | 想定リスクと備え |
金融機関は「夢」ではなく「論理」で判断する
事業への熱意や将来のビジョンは重要ですが、金融機関が求めているのは「数字で説明できる確実性」です。
つまり、情熱 × 論理 = 融資の信頼 という式が成り立ちます。
説得力ある事業計画書の基本構成(7つの要素)
① 事業概要(ビジネスの全体像)
どんな事業をするのか(業種・サービス内容)
誰に・何を・どうやって提供するのか
事業の目的と将来的な目標
→ワンポイント:難しい専門用語は避け、誰が読んでもわかる説明に。
② 経営者のプロフィール
経歴・スキル・資格などの信頼性
起業・事業継続のモチベーション
→「なぜ自分がこの事業をやるのか?」を明確にしましょう。
③ 市場分析と競合状況
顧客ニーズやターゲットの定義
市場規模や成長性
主な競合と自社の優位性
→市場データや調査結果を活用すると説得力が増します。
④ 商品・サービスの特徴と提供方法
商品・サービスの強みや差別化ポイント
販売・提供の方法(店舗/EC/訪問など)
原価・仕入・販売価格の設計
→価格の根拠や仕入れ先の安定性も明記すると◎。
⑤ 売上・利益・キャッシュフローの予測
売上・原価・利益の月次推移(1〜3年)
資金繰り表(キャッシュの流れ)
→実現可能性の高い数値設定が重要。「根拠のない希望的観測」はNG。
⑥ 資金の使い道と返済計画
融資額の具体的な使途(例:設備資金○○万円)
自己資金の割合
返済方法とスケジュール(余裕を持った設定が理想)
→「この資金で何を実現し、どんなリターンを見込むのか」が鍵です。
⑦ リスク管理と今後の戦略
想定される課題(例:競合の増加、売上減少)
その対応策(複数チャネルでの集客等)
今後の展望(新規展開、採用計画、DX化など)
【事例】美容室の開業で成功した事業計画書
業種:個人経営の美容室(創業融資利用)
項目 | 内容概要 |
自己紹介 | 10年の美容師経験。地域密着型で独立を希望。 |
コンセプト | 30〜40代女性向け「癒し空間×ヘアケア」特化型サロン |
市場分析 | 周辺3km圏内に競合4店舗、価格帯は同程度。ターゲット明確で差別化可能。 |
資金計画 | 設備300万円、運転資金200万円 → 融資希望額400万円 |
収支計画(初年度) | 売上1,200万円、営業利益200万円、返済月額3.5万円 |
リスク想定と対策 | 予約低迷時のSNS広告強化と回数券導入で対応 |
→「自分にしかできない事業×収支バランスの根拠」が好評価につながりました。
よくある質問(FAQ)
Q. テンプレートだけ使えばうまくいきますか?
A. テンプレートはあくまで「型」。あなたの事業のリアリティや熱意を数字と言葉で伝えることが重要です。
Q. 売上予測って、どう作ればいいの?
A. 顧客数×単価×回転率(リピート)でロジカルに計算。過去の実績や他社の事例を参考にすると精度が上がります。
Q. 赤字スタートでも大丈夫?
A. 初年度は赤字でもOK。ただし「2年目以降にどう黒字化するか」を明確にしておく必要があります。
まとめ:伝わる計画書で“未来”を引き寄せる
融資を引き出すために必要なのは、「熱意」と「数字に裏打ちされた構想力」。
事業計画書は金融機関との信頼構築の第一歩です。
自社の価値を正しく伝え、共感を得る資料として、丁寧に作り上げていきましょう。
試してみよう(行動の提案)
事業計画書の「たたき台」を作ってみる → まずは手書きでもOK。頭の中を見える化してみましょう。
会計士や専門家にレビューを依頼する → 数字や構成に不安がある場合、プロの目で確認してもらうのがおすすめ。
実際の金融機関に相談してみる → 日本政策金融公庫や地元の信用金庫など、早めに意見をもらいましょう。