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2024年税制改正|暗号資産の「評価方法・みなし譲渡・届出」を実務目線で総ざらい(法人向けやさしいガイド)

  • 執筆者の写真: 智史 長谷川
    智史 長谷川
  • 9月17日
  • 読了時間: 5分

更新日:9月19日


会社で暗号資産(仮想通貨)を保有・活用するケースが増えています。

一方で「どう評価する?」「いつ届出?」「区分が変わったら課税は?」と、税務の実務は意外と落とし穴だらけ。

2024年(令和6年)税制改正では、特定譲渡制限付暗号資産に関する評価・届出、区分変更時のみなし譲渡などが整理・拡充されました。


本記事では、まず結論→理由→手順→チェックリストの順で、経営者・実務担当が迷わないための要点をまとめます。

(参考)



記事の要約


  1. 特定譲渡制限付暗号資産は、期末評価を「時価法/原価法」から種類ごとに選択・届出。届出が無い場合は原価法に。

  2. 譲渡原価の単価は移動平均法/総平均法から選択。届出がない場合は移動平均法。

  3. 区分が変わるとみなし譲渡が発生し得る(時価/簿価で認識時に益金・損金)。



本文


1. まず結論:何を決めて、いつまでに、どこへ?


1-1 評価方法(期末の評価額)

  • 対象:市場暗号資産に該当する特定譲渡制限付暗号資産(自己発行は除く)

  • 選択肢:時価法 or 原価法種類ごとに選定)⇒原価法が選択可能に!

  • 期限:取得日の属する事業年度の確定申告書の提出期限までに税務署長へ届出(中間申告がある場合はその提出期限)。未選定なら原価法に。


1-2 譲渡原価の単価

  • 選択肢:移動平均法 or 総平均法(区分ごとに選定)

  • 未選定:移動平均法が自動適用


1-3 区分が変わったら(みなし譲渡)

  • 区分が変わる事実が起きた時点で、時価/簿価譲渡したものとみなす(=益金/損金を認識)。「何が起きたら、いつ、いくらで?」の対照表は下記。


2. 用語をやさしく整理(早見表)

用語

ざっくり意味

実務の要点

市場暗号資産

取引所で一般売買される暗号資産

原則時価法(以下区分で例外あり)

特定譲渡制限付暗号資産

一定の移転制限等が公表・管理されるもの(要件1・要件2)

時価法/原価法の選択・届出が必要。要件の中核は移転制限の実効性とJVCEA公表手続。

自己発行暗号資産

自社が発行し、発行時から継続保有

原価法

特定自己発行暗号資産

自己発行で継続した譲渡制限等が付くもの

原価法。なお、特定譲渡制限付に該当した/していたものは特定自己発行に当たらない扱い

(出典)令和6年度法人税関係法令の改正の概要 国税庁
(出典)令和6年度法人税関係法令の改正の概要 国税庁

3. 特定譲渡制限付暗号資産の「要件」


3-1 要件1:移転制限などの特定条件が付されていること

  • 「譲渡の制限等」が実態として効いている(解除には概ね1年以上など)

  • 信託スキームの場合、受託者は信託会社/信託業務を営む金融機関に限定、受益権の譲渡・変更は不可 等。


3-2 要件2:JVCEA(認定資金決済事業者協会)で公表されるための通知・手続を実施

  • 交換業者への特定条件通知→JVCEAサイトで種類・数量等を公表

  • 「保有者が自由に解除できないことを知る第三者」(ウォレット管理者など)の関与が求められる場合あり。


    (ポイント)

    要件1+要件2を満たして初めて「特定譲渡制限付」に該当します。届出や文書化の証跡設計が重要です。



4. 「区分が変わった」ら要注意

(何が起きたら/いつ/いくらで(評価基準))

ざっくり事象

認識のタイミング

譲渡(取得)価額

特定自己発行暗号資産が特定自己発行に該当しなくなった

事実の発生時

簿価 

市場暗号資産が特定譲渡制限付に該当

事実の発生時

時価 

市場暗号資産が特定譲渡制限付に該当しなくなった

事実の発生時

簿価 

期中のある時点で時価法選定の特定譲渡制限付に該当→評価方法の変更により期末までに該当しなくなった

期末

時価 

上記資産が特定譲渡制限付に該当しなくなった

事実の発生時

時価 

それ以外の暗号資産が特定譲渡制限付に該当

事実の発生時

簿価 

上記に当たらず、期中に市場暗号資産に該当しないことになった

期末

期末直前の公表売買価格等 

この「みなし譲渡」は実際に売っていなくても損益を認識するため、税負担の前倒しが起き得ます。


5. 実務で迷わないための判定チャート


Step 1:保有資産の棚卸

  • 自己発行か? 2) 移転制限の実効性は? 3) JVCEA公表手続は? → 特定譲渡制限付要件1・2の充足を確認。


Step 2:評価方法の選定

  • 特定譲渡制限付(自己発行を除く)→時価法/原価法種類ごとに決め、届出期限を管理。未選定=原価法


Step 3:単価計算方法の選定

  • 区分ごとに移動平均/総平均を選ぶ。未選定=移動平均


Step 4:区分変更の監視

  • ステータスが動いたらみなし譲渡の判定(いつ/いくらで)→税額・資金繰りへの影響をシミュレーション。



よくある質問(Q&A)


Q1. 時価法と原価法はどちらが有利?

A. ビジネスモデル次第です。売買回転が速いなら時価法で実勢反映、事業利用・長期保有中心なら原価法で期末課税のブレを抑制しやすい、が基本の考え方。評価方法は種類ごとに選べます。


Q2. 届出を忘れたら?

A. 原価法が自動適用。後から変更したい場合は、期首前日まで申請し、承認が必要


Q4. そもそも「特定譲渡制限付」に当たるか不安です。

A. 要件1(移転制限の実効性)と要件2(JVCEA公表手続)の2本立てで判定。技術的なロックアップや第三者関与の設計、交換業者/JVCEAへの情報提供・公表まで一連の証跡を整えましょう。



まとめ


  • 2024年改正により、市場暗号資産のうち特定譲渡制限付暗号資産に該当する場合は、期末時価評価の対象から除かれた。特定譲渡制限付暗号資産は、種類ごとに「時価法/原価法」を選定し、期限まで届出。単価計算も移動平均/総平均で選択。未選定の場合は(原価法/移動平均)。

  • 区分変更=みなし譲渡に注意して、暗号資産のステータスを管理する。

  • 今後の税制改正により、期末時価評価のルールも変更される可能性があり、動向を注視する必要がある。


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