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売上原価と販売費及び一般管理費、どちらに計上する?経理判断のポイントを徹底解説

  • 執筆者の写真: 智史 長谷川
    智史 長谷川
  • 6月13日
  • 読了時間: 4分

更新日:7月11日


経理処理の“迷いどころ”に明確な判断を


決算業務や日々の経理処理の中で、「これは売上原価?それとも販売費および一般管理費(販管費)?」と迷った経験はありませんか?


特に製造業やサービス業、スタートアップでは、会計処理の区分が経営判断にも直結するため、適切な仕訳が求められます。


この記事では、売上原価と販管費の違いや分類ルール、判断基準、実務でよくあるケースを交えながら、分かりやすく解説します。


記事要約


  • 売上原価と販管費の基本的な違いは「販売との直接関係性」にある

  • 迷いやすい支出項目の分類は、発生目的や業務の流れから判断する

  • 正確な分類は財務分析や経営判断に直結する重要ポイント



売上原価と販管費の違いとは?


売上原価とは?


売上原価とは、「販売した商品や製品を作るために直接かかった費用」を意味します。

たとえば以下のような費用が該当します:


  • 商品仕入原価(商社・小売業)

  • 材料費、労務費、製造経費(製造業)

  • 外注加工費や工場の光熱費も対象になることが多い


ポイント:販売に“直接”結びつく費用


販売費及び一般管理費(販管費)とは?


販管費は、商品やサービスの販売活動や、企業の運営全般にかかる間接費用です。

主に以下のような費目が含まれます:


  • 広告宣伝費、営業交通費

  • 管理部門の人件費(総務・経理など)

  • 事務所の家賃や水道光熱費

  • 会議費、通信費など


ポイント:販売活動や組織運営に“間接的に”必要な費用



実務で迷いやすいケースの分類ガイド


費用項目

原則的な分類

判断のポイント

製造スタッフの人件費

売上原価

製品の直接製造に関わっている

営業スタッフの人件費

販管費

販売活動に関わっているため

工場の電気代

売上原価

生産活動に不可欠なため

本社の電気代

販管費

管理部門の運営費用

商品パッケージデザイン費

販管費

ブランド戦略など販売促進の一環

試作品の外注加工費

売上原価(場合によっては開発費)

将来販売を前提にした原価の一部とみなすケースあり

顧客への送料

販管費

原則は販売の一環とみなす



判断基準と注意点


判断基準1:費用の発生目的

同じ支出でも「目的」が異なれば、計上区分が変わります。

例:

  • 自社で使用する広告物:販管費(広告宣伝費)

  • 商品に付属する説明書の印刷:売上原価


判断基準2:業種・業態による違い

  • 製造業:工場関連費用の多くが売上原価に該当

  • 小売業:商品の仕入れが売上原価、店舗の運営費は販管費

  • サービス業:人件費が多く、直接業務か間接業務かで区分が分かれる


判断基準3:会計方針と一貫性

企業が定めた会計方針に従い、毎期同じ基準で処理することが重要です。

税務調査でも、「継続的な処理」がされているかどうかが確認されます。



事例:クラウド開発企業A社のケース


A社は、受託開発と自社SaaSを提供するスタートアップ。開発スタッフの人件費をどちらに計上するかが議論となりました。


  • 受託開発スタッフ → 売上原価:顧客に納品するための直接費用

  • 自社サービスの新機能開発 → 販管費あるいは資産計上(開発費)


ここで重要なのが、「誰のために」「どの機能を」「将来どう収益化するか」の視点です。費用が「直接」収益と連動するなら売上原価、そうでなければ販管費か資産計上の可能性があります。



よくある質問(Q&A)


Q1:人件費はすべて販管費になるのですか?

→ いいえ。製造スタッフや受託作業に従事するスタッフなど、直接業務に従事している場合は売上原価となります。


Q2:販売前の商品広告費は原価に含まれますか?

→ いいえ。販売促進のための広告費は、原則として販管費(広告宣伝費)です。


Q3:配送費は原価ですか?

→ 販売価格に含めていれば売上原価に分類することも可。ただし、通常は販管費として処理することが多いです。


Q4:展示会の出展費用は売上原価?販管費?

→ 販管費(広告宣伝費または販売促進費)に該当します。展示会は販売活動や新規顧客開拓の一環とみなされるため、たとえ製品サンプルを提供したとしても、その目的が「販売促進」であれば販管費扱いが原則です。


Q5:社内で使用する試作用部品の購入費は?

→ 基本的には販管費(開発費など)です。販売用製品ではなく、研究・開発段階での内部試作であれば、直接的な売上原価とは言えません。

ただし、明確に将来の売上に結びつくと判断される場合は、資産計上の対象(繰延資産や無形資産)となることもあります。


まとめ


売上原価と販管費の正確な区分は、財務分析や経営戦略の精度を高める上でも重要なポイントです。

分類の誤りは、利益の把握を誤らせたり、税務リスクにもつながりかねません。


ポイントは以下の3つ:

  • 支出の目的と業務への直接性を確認する

  • 業種や会計方針に応じた処理の一貫性を保つ

  • 判断に迷う場合は、顧問税理士や会計士に相談する



試してみよう


  1. 月次での費用内訳を見直して、売上原価と販管費のバランスを確認してみましょう。


  2. 曖昧な費用項目については、記録メモや発生目的を明記する運用を始めましょう。


  3. 年次決算前に、経理処理の方針を社内で共有し、処理の一貫性を高めましょう。


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