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経営判断に役立つ「損益分岐点分析」の使い方

  • 執筆者の写真: 智史 長谷川
    智史 長谷川
  • 6月13日
  • 読了時間: 5分

更新日:6月19日


「いくら売れば利益が出るのか分からない」

「赤字続きだけど、どこから改善すべきか迷っている」


──そんな悩みを抱えている経営者の方も多いのではないでしょうか。


中小企業や個人事業主が限られたリソースで着実に利益を出していくためには、「損益分岐点分析(そんえきぶんきてんぶんせき)」という考え方が極めて有効です。


この記事では、経営判断の基礎として知っておきたい損益分岐点分析の仕組みと使い方、さらに「限界利益」の考え方や「目標利益を達成する売上高」の応用計算まで、実践的に解説します。



記事要約


  • 損益分岐点分析は「利益ゼロの境界線」を見える化する経営ツール


  • 「限界利益」や「限界利益率」の概念が理解のカギ


  • 目標利益を盛り込んだ売上目標設定にも応用できる



損益分岐点分析とは?


損益分岐点の意味

損益分岐点(Break Even Point)は、売上と費用がちょうど一致し、利益も損失も出ないラインのこと。

ここを超えれば黒字、下回れば赤字という明確な目安になります。



限界利益の重要性


損益分岐点分析のカギとなるのが、「限界利益(げんかいりえき)」という考え方です。


限界利益とは?

限界利益 = 売上高 − 変動費

つまり、「1個売れたときに、固定費や利益として残る金額」です。


この限界利益が高ければ高いほど、少ない売上でも黒字化しやすい体質と言えます。


限界利益率(1 − 変動費率)


損益分岐点売上高は以下の式で求められます。

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率(限界利益率 = 1 − 変動費率)

例えば変動費率が40%なら限界利益率は60%(=1 − 0.4)となり、売上の60%が固定費と利益として残る金額です。



活用のステップ


ステップ1:費用の分類


まずは自社の支出を「固定費」と「変動費」に分けましょう。

費用の種類

内容

具体例

固定費

売上に関係なく毎月かかる費用

家賃、人件費、保険料など

変動費

売上に比例して増減する費用

材料費、仕入原価、外注費など


ステップ2:限界利益率を算出


変動費率を算出して、それをもとに限界利益率を出します。


例)売上100万円、変動費40万円 → 変動費率40% → 限界利益率60%


ステップ3:損益分岐点売上を計算


固定費が50万円、限界利益率60%の場合:

損益分岐点売上高 = 50万円 ÷ 0.6 = 約83.3万円


応用:目標利益を加味した損益分岐点の拡張式


経営は利益を出してこそ意味があります。


「目標とする利益」を達成するには、いくら売ればよいのか?

──そんな戦略的判断も、以下の式で可能です。


目標利益付き売上高の計算式

必要売上高 = (固定費 + 目標利益) ÷ 限界利益率

例)固定費50万円、目標利益30万円、限界利益率60%の場合:

必要売上高 =(50万+30万)÷ 0.6 = 約133.3万円

→ 目標利益30万円を得るには、月133.3万円の売上が必要と分かります。



損益分岐点分析が役立つシーン


1. 価格戦略の見直しに


限界利益率が低すぎて利益が残らない…という場合は、価格の見直しや付加価値の追加を検討すべきタイミングかもしれません。

損益分岐点を分析することで、「最低でもいくらで売らないと赤字になるか」が明確になります。


2. 新事業・新商品の採算性チェック


新規事業のシミュレーションにも活用できます。固定費や限界利益率が変わる場合でも、あらかじめ必要な売上高が分かることで、投資の判断材料になります。


3. コスト削減の優先順位付け


損益分岐点が高すぎる=固定費や変動費が重すぎる可能性があります。

見直すべき支出の優先順位がつけやすくなります。



中小企業の活用事例


事例1:飲食店A社の損益改善


・固定費:50万円

・平均売上:70万円

・変動費率:50% → 限界利益率:50%


→ 損益分岐点売上高は 50万 ÷ 0.5 = 100万円(実は赤字体質)

→ 利益率の高い商品への集中、営業時間短縮によってコスト削減し黒字化。


事例2:雑貨販売B社の目標利益設定


・固定費:30万円

・変動費率:60% → 限界利益率:40%

・目標利益:20万円


→ 必要売上高 =(30万+20万)÷ 0.4 = 125万円

→ 年間目標を月換算してKPIに設定、利益達成に向けた戦略実行。



補足:損益分岐点の注意点と活用のコツ

注意点

解説

一定の売上前提

売上が大きく変動する業種では平均化が必要

固定費の把握漏れ

実は「準固定費(売上に応じて変動する部分的固定費)」に注意

定期的な見直し

コスト構造や価格が変われば再分析を


よくある質問(Q&A)


Q1. 限界利益ってなぜ重要なの?

A. 売上が増えても変動費が多ければ利益が残りません。限界利益は「いくら残せるか」の指標です。


Q2. 目標利益付きの式はいつ使う?

A. 事業計画や銀行融資の際、「これだけ利益を出したい」という明確な目標があるときに使えます。


Q3. 固定費と変動費の区分が難しいときは?

A. おおまかな分類でもOKです。まずはざっくり試算して、定期的に見直していくのが現実的です。


Q4. 初期費用は固定費に含めるべき?

A. 設備投資などの初期費用は「減価償却費」としてなら固定費に計上します。支払時点の現金支出とは区別しましょう。



まとめ


  • 損益分岐点分析は「いくら売れば黒字になるか」を可視化する、非常に実践的な手法。


  • 限界利益の理解がカギであり、変動費を抑え限界利益率を高めると黒字化しやすい。


  • さらに、目標利益を組み込むことで、戦略的な売上計画が立てられる。


数字に基づく経営判断が、会社を一段階強くします。



試してみよう(行動リスト)


  1. まずは自社の費用を「固定費」と「変動費」に分けてみよう


  2. 限界利益率を算出して、損益分岐点売上を試算してみよう


  3. 目標利益を加えた売上目標を計算し、KPIに落とし込もう


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