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輸入取引における仕入税額控除の仕組みと実務ポイント

  • 7月25日
  • 読了時間: 4分

海外から原材料や商品を仕入れるとき、必ず関わってくるのが「消費税」です。

輸入の際は、国内仕入れとは違う計算が行われ、税関で消費税を納めるケースが多いです。このとき適用されるのが「輸入取引の仕入税額控除」という仕組みです。


「関税や消費税を払ったけれど、仕入れ税額控除はどうすればいいの?」

「インボイス制度が始まったけど、輸入取引の場合は何か特別な対応が必要?」


そんな疑問をお持ちの方に、この記事では 輸入取引における仕入れ税額控除の仕組み、具体的な計算・事例、実務での注意点 をわかりやすく解説します。



記事の要約


  • 輸入取引では、税関で納付した消費税が「仕入税額控除」として控除対象になる

  • インボイス制度下でも、輸入取引は基本的に「輸入許可通知書」で対応

  • 輸入許可通知書・納税証明書などの証憑をきちんと保存することがポイント



輸入取引の基本と消費税の関係


輸入取引とは

海外の取引先から商品を購入し、日本国内に持ち込む取引を指します。中小企業でも、部材の調達やネットショップ運営などで輸入を行うケースは増えています。


輸入時に課される税金

輸入の際には、税関で 関税 と 消費税(輸入消費税) を納めます。この消費税は、国内での仕入れ時に支払う消費税と同様、一定の条件を満たせば後日「仕入税額控除」として控除できます。


国内取引との違い

国内取引では、仕入先から交付される「適格請求書(インボイス)」を基に仕入税額控除を行いますが、輸入取引では相手は海外業者のためインボイス制度の対象外です。

その代わり、税関での輸入許可通知書や納税証明書 が、仕入税額控除の根拠となります。



仕入税額控除の仕組み


仕入税額控除の基本

消費税は「売上にかかる消費税」から「仕入れにかかる消費税」を差し引いて計算します。輸入の場合、税関で納付した消費税は「仕入れにかかる消費税」として控除できます。

例:

  • 税関で納めた輸入消費税:100万円

  • 国内売上にかかる消費税:200万円→ 差引で 200万円 − 100万円 = 100万円を納付


インボイス制度と輸入取引

2023年10月から始まったインボイス制度では、仕入先から交付される適格請求書が必須となりました。しかし、輸入取引は「税関での申告が根拠」となるため、インボイス番号等の取得は不要 です。



実務での仕訳例(会計freee)



標準税率の課税貨物、税込み経理のケース


① 海外の仕入先からの請求分

勘定科目

税区分

金額

品目

輸入仕入高

課対輸本

×××


※ 海外取引のため「課対輸本」を選択します。


通関業者からの請求分

通関業者からの請求書、税関からの輸入許可通知書をもとに仕訳します。

勘定科目

税区分

金額

品目

輸入仕入高

課対輸本

×××

運賃・保険料

輸入仕入高

対象外

×××

通関料

輸入仕入高

課対輸本

×××

関税

輸入仕入高

課対輸税10%

×××

輸入消費税(国税)

輸入仕入高

地消貨割10%

×××

輸入消費税(地方税)

ポイント:

  • 運賃・保険料や関税は「課対輸本」、通関料は「対象外」

  • 輸入消費税は、国税と地方税に分けて、それぞれ「課対輸税10%」「地消貨割10%」として記帳



輸入取引の実務上の注意点


書類保存が必須

輸入消費税を控除するには、税関での証憑を保存しておくこと が条件です。万一紛失すると、仕入税額控除が認められません。


保存すべき主な書類

  • 輸入許可通知書(輸入許可書上の名義人が自分になっていることを確認する

  • 納税領収書

  • 通関業者からの請求書


免税事業者はどうなる?

売上高1,000万円以下で免税事業者の場合、そもそも消費税を納める義務がないため、仕入れ税額控除もありません。

輸入時には消費税を払うことになりますが、還付は受けられない点に注意してください。


税務調査で指摘されやすいポイント

「輸入許可通知書と帳簿の金額が一致していない」「書類が保存されていない」といった点が指摘されやすいので、定期的な確認が必要です。



よくある質問(Q&A)


Q1. インボイス番号がないと控除できない?

A1. 輸入取引の場合は、インボイス番号は不要です。税関での納付を示す書類があれば控除可能です。


Q2. 個人輸入でも控除できる?

A2. 事業用として仕入れたものであれば可能です。プライベートな購入は対象外です。


Q3. 関税は控除できる?

A3. 関税は消費税ではないため、仕入れ税額控除の対象にはなりません。費用として計上します。


Q4. 還付申告はできる?

A4. 課税売上よりも課税仕入れが多い場合、輸入消費税を含めて還付申告が可能です。特に輸出業者などでは還付を受けるケースが多くあります。



まとめ


  • 輸入取引では、税関で納付した消費税を「仕入税額控除」として差し引ける

  • インボイス制度開始後も、輸入取引は特例的な扱いで、税関書類が証憑となる

  • 書類保存と帳簿記載を正しく行えば、消費税負担を軽減できる

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