エンジェル税制の最新解説 ― スタートアップ投資を後押しする税制優遇の実務
- 智史 長谷川
- 6月12日
- 読了時間: 3分
更新日:6月19日
エンジェル税制は、スタートアップ企業への個人投資を促進するために設けられた税制優遇制度です。
個人投資家が一定の要件を満たす未上場企業に投資した場合、所得税の非課税措置などが受けられます。
2025年(令和7年度)以降、制度改正による拡充も進んでいます。
記事要約
エンジェル税制は、未上場企業への個人投資に対して所得税の優遇措置を認める制度。
2025年改正では、再投資期間の延長・保有期間の設定などが加わった。
投資家・企業の双方に要件があり、事前の確認申請と確定申告が必要。
エンジェル税制の主な優遇措置
優遇措置 | 控除対象 | 控除先 | 控除上限 | 主な企業要件 | 外部資本比率 |
(参考)起業特例(設立した会社の発起人が受けられる制度) | 会社設立時の出資額全額 | 設立年の株式譲渡益 | 上限なし (非課税となるのは20億円の出資までで、それを超える分は課税繰延) | 設立1年未満 | 1/100以上 |
優遇措置A | 投資額全額-2,000円 | その年の総所得金額 | 総所得金額×40% と800万円のいずれか低い方(課税繰延) | 設立5年未満 | 1/6以上(特例1/20以上) |
優遇措置B | 投資額全額 | その年の株式譲渡益 | 上限なし(課税繰延) | 設立10年未満 | 1/6以上 |
プレシード・シード特例 | 投資額全額 | その年の株式譲渡益 | 上限なし (非課税となるのは20億円の出資までで、それを超える分は課税繰延) | 5年未満 | 1/20以上 |
売却時の損失繰越控除
未上場スタートアップ株式の売却による損失は、他の株式譲渡益と相殺でき、相殺しきれなかった損失は翌年以降3年間繰り越しが可能です。
上場しないまま破産・解散した場合も同様の措置が受けられます。
最新の税制改正ポイント(令和7年度)
再投資期間の延長
株式譲渡益が発生した翌年末までに再投資した場合、エンジェル税制の適用が可能となりました。
保有期間の設定
株式取得の翌年末までの保有が非課税措置の条件となりました(IPOやM&A等の例外を除く)。
投資家・スタートアップの要件
投資家の主な要件
金銭による新規株式取得であること
投資先が同族会社の場合、主要株主グループに属していないこと
自身や親族が経営していた事業の全部を承継させていないこと
スタートアップの主な要件
設立5年未満(優遇措置Bは10年未満)の中小企業
未上場・未登録の株式会社
外部資本比率が1/6以上(特例は1/20以上)
大企業グループの子会社でないこと
風俗営業等に該当しないこと
設立経過年数ごとに、研究開発や成長性など追加要件あり
投資方法と申請手続き
投資方法は以下の3つに分類され、それぞれ申請手続きが異なります。
直接投資(個人が直接株式を取得)
認定投資事業有限責任組合(LPS)経由
認定少額電子募集取扱業者(ECF)によるクラウドファンディング
いずれの場合も、スタートアップが都道府県等に申請し、「確認書」を取得。投資家は確定申告時にこの確認書を税務署へ提出します。
まとめ
エンジェル税制は、個人投資家のスタートアップ投資リスクを軽減し、起業・イノベーションを強力に後押しする制度です。
2025年以降の制度改正で使い勝手がさらに向上しており、今後もスタートアップ・エコシステムの発展に寄与することが期待されています。