会社設立Q&A
Q:個人事業主と法人ではどのように税金関係が変わりますか?
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個人事業主は所得税(累進課税5~45%)、法人は法人税(基本的には23.2%)が課せられ、所得が大きいほど個人事業主の場合のほうが税負担が大きくなります。
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法人の場合は、役員報酬として収入を得ますが、利益操作防止の観点から事業開始一定期間内に年間の支給額を決定する必要があります。個人の場合は、売上から経費を差し引いた事業利益が事業者の収入となるため、役員報酬のような制約はありません。
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法人の場合は社会保険の加入が強制されます。個人事業主の場合は、従業員5人以上の場合に強制加入となります。
Q:設立時の資本金はどのように考えたらよいでしょうか?
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1円からでも自由に会社を設立することができます。ただし、設立1期目から債務超過になりやすいので、金融機関に融資を依頼する場合は、債務超過は避けるべきです。
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逆に1千万円以上に設定すると、消費税の課税事業者となってしまうので、特に制約等がなければ1千万円未満に設定するほうが税負担を考える上では有利になります。
Q:決算月はどのように考えればよいでしょうか?
決算月も自由に設定することができますが、事業の繁忙期を避けることで、時間的な余裕をもって決算に取り組むことができます。また、消費税の免税事業者となる期間を考慮した場合、設立事業年度をなるべく1年間に近づけることで、免税事業者の恩恵を長く受けることができます。
Q:設立事業年度から課税売上高が1千万円を超えそうですが、免税事業者の恩恵を長く受けることは可能ですか?
基準期間(前々事業年度)の課税売上高が1千万円を超える場合に課税事業者となります。基準期間がない1期目、2期目は、一定の場合を除き免税事業者となります。
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1期目:①資本金が1千万円未満、②株式の50%超を直接または間接的に保有している株主がおり、設立法人の基準期間に相当する期間において株主の課税売上高が5億円以下である。
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2期目:①②は1期目同様、③特定期間(前事業年度の上半期6ヶ月)の課税売上高または給与等支払額が1千万円以下となる。
2期目について、特定期間の課税売上高および給与等支払額が1千万円を超えることがあらかじめ見込まれていれば、1期目を7ヶ月以下に設定すれば、前事業年度は特定期間に該当しないので、引き続き免税事業者となります。
Q:定款作成する際のポイントを教えてください。
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事業目的の記載は自由なので、仮に事業展開する中で、追加を検討したい業務があれば、あらかじめ記載しておくとよいです。株主総会の決議を経ることで事後的に定款内容を変更することも可能ですが、変更登記を別途行う必要があります。
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株主が複数おり、種類の異なる株式を発行して、株主ごとに株主の権利関係に違いを設けたい場合は、種類株式を定めることができます。たとえば、決定事項に対して拒否権を持つ株式や、無議決権とする代わりに配当を優先的に支払う株式とするなど、幅広い設計が可能です。
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株主総会の招集に関して、「毎事業年度の末日の翌日から3ヶ月以内に招集する」という文言とすることで、税務申告書類の提出期限を原則2ヶ月以内とされるところ、必要な届出をすることで1ヶ月間延長することができます。合同会社の場合は、別途「3ヶ月以内の決算確定」を追加することで、同様の延長が可能になります。
Q:会社設立のコストは最低どの程度ですか?
会社設立の法的な費用は、登録免許税、印紙代、定款認証代があります。法人化の形態や電子定款の有無によって必要コストは以下のようになります。
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株式会社の場合は、合計で24.2万円(電子定款を選択した場合は、定款印紙税4万円が不要のため、20.2万円)。
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合同会社の場合、合計で10万円(電子定款を選択した場合は、定款印紙税4万円が不要のため、6万円)。
代行を依頼する場合は別途数万円程度の手数料が発生します。
Q:法人税の節税対策として、設立時からしておくべきことは何でしょうか?
設立時に特に重要なものとしては以下になります。
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青色申告の承認申請書を税務署に提出することで、様々な特典を受けることができます(例えば、開業後の営業赤字を翌期以降の利益と相殺できる、30万円未満の取得資産について即時償却できる等)
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設立前に発生した費用でも、創業や開業に関する費用は繰延資産として償却(損金算入)することができます。
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資本金は1千万円未満とすることで、消費税の免税事業者となることができます。
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役員報酬を支給することで個人の所得税計算上、給与所得控除(最高195万円)を適用することができます
Q起業する際の事務手続きは税理士、行政書士、司法書士、どなたに依頼すればいいですか?
税務署への設立関係の届出は税理士、許認可取得は行政書士、会社設立登記は司法書士が代理することができます。税理士に依頼すれば、提携している司法書士や行政書士と連携して、必要な設立手続きを一式行うことができます。
Q個人事業主が法人成りすることで節税効果を得られる、売上の目安があれば教えてください。
一般的には、売上高1千万円と事業所得5百万円が法人成りを検討するタイミングとなります。
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基準期間(前々年)、または特定期間(前年開始6ヶ月間)の課税売上高が1千万円を超える場合に、消費税の納税義務が発生しますが、法人成りした場合は、再び免税事業者となることも可能です。
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法人成りして役員報酬を支給することで、個人の税金の計算上では、給与所得控除(最高で195万円)が適用され節税効果がありますが、個人と法人の税率差等を考慮すると事業所得5百万円程度が目安となります。
Q:法人設立前に、店舗を借りたり営業活動するなどして経費が発生していますが、法人で発生した費用として処理することができますか。
設立事業年度の費用として処理することができます。ただし、設立期間が通常要する期間を超えて長期にわたり経費が発生している場合や個人事業を引き継いで設立された場合は、設立法人の経費と認められません。
設立期間は通常1ヶ月程度であり、法人と区分して申告することは手間がかかること、取引金額も少額と想定されるため、設立事業年度に含める処理が認められています。
法人税基本通達2-6-2 法人の設立期間中の損益の帰属
法人の設立期間中に当該設立中の法人について生じた損益は、当該法人のその設立後最初の事業年度の所得の金額の計算に含めて申告することができるものとする。ただし、設立期間がその設立に通常要する期間を超えて長期にわたる場合における当該設立期間中の損益又は当該法人が個人事業を引き継いで設立されたものである場合における当該事業から生じた損益については、この限りでない。
Q:会社設立後に必要な届出を教えてください。
税務署、都道府県税事務所、市区町村に対して期限内に以下の届出が必要になります。
Q:どのような支払いが源泉徴収制度の対象になりますか?
役員や従業員に対する給料、賞与、退職手当等の支払いのほか、個人に対する原稿料、講演料、税理士や社会保険労務士等に対する専門家報酬の支払いなどが対象になります。源泉徴収した所得税は、翌月10日までに納付しなければなりません。また、納期の特例に関する申請書を提出している場合は、半年分をまとめて納付することができます。
Q:どのような場合に社会保険に加入する必要がありますか?
すべての法人は社会保険に加入する義務があります。個人事業主の場合でも、一定の業種を除き、常時5人以上の従業員を雇用する場合に加入義務が生じます(ただし、個人事業主本人は加入することができない)。また、社会保険料は会社と従業員が折半します。
Q;すべての役員が社会保険に加入しなければなりませんか?
常勤役員は給与を受け取っている場合に加入義務が生じます。非常勤役員の場合は、報酬を受け取っている場合でも、勤務実態や業務執行、報酬の額などから総合的に判断して加入の義務が判断されます。
Q:パートやアルバイトは社会保険に加入しなければなりませんか?
以下の2つの基準を満たす場合、加入義務があります。
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1週間の所定労働時間が、一般従業員の4分の3以上の場合
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1ヶ月の所定労働日数が、一般従業員の4分の3以上の場合
Q:社会保険の加入手続きについて教えてください。
下記を管轄の年金事務所に提出します。
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新規適用届
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対象となる加入者につき、「(健康保険厚生年金保険)被保険者資格取得届」
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加入者に被扶養者がいる場合、「健康保険被扶養者(異動)」
Q:労働保険は加入する必要がありますか?
労働保険は、労災保険と雇用保険の総称ですが、労働者(パート、アルバイト含む)を一人でも雇用していれば加入する必要があります(雇用保険では、週20時間未満や31日以上継続雇用見込みなし等、一部適用除外あり)。また、会社代表者は保険対象外となります。
Q:労働保険の加入手続きについて教えてください。
以下をそれぞれ提出します。
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「労働保険関係成立届」及び「労働保険概算保険料申告書」を労働基準監督署に提出
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雇用保険に加入する事業所は、対象となる加入者につき、「雇用保険適用事業所設置届」及び「雇用保険被保険者資格取得届」をハローワークに提出
また、雇用保険は労災保険と違い、一人ひとりに対して加入手続きが必要になります
Q:就業規則は作成する必要がありますか?
常時10人以上の労働者を使用する事業所は作成義務があります。仮に作成していない場合でも、労働基準法を順守する必要があり、また、労働基準法に違反する就業規則は無効となります。