法人成りQ&A

 個人事業を廃業して、法人が事業を引き継ぐことを「法人成り」といいます。事業戦略として法人成りを選択するケースや税務上のメリットを受けるために選択するケースなど様々な理由があります。

会社設立に関する手続きや留意点などは「会社設立QA」をご参照ください。

 

Q:法人成りを実施する時期について考慮すべきことはありますか?

 

繁忙期などは避けたうえで、以下の点を考慮することになります。

  • 法人成りした場合でも、その年の個人事業の確定申告は必要になるので、年初(1月など)は避けて年内(12月など)になるべく法人成りすることで、個人の確定申告の手間を減らすことができるケースがあります。たとえば、令和3年12月と令和4年1月では、令和4年1月に法人成りが遅れることで、令和4年度(1ヶ月分)の確定申告が追加的に必要になります。

  • 法人成りに伴い、法人に引き継ぐ事業用資産がある場合は、消費税の計算に注意が必要になるので、課税事業者になる前(免税事業者のうちに)に法人成りすることで、事業用資産の消費税の計算に特段の配慮が不要になります。

 

 

Q:法人成りのメリットを教えてください。

  • 社会的な信用が得られやすい(新規取引の受注、資金調達)

  • 従業員を雇用しやすい

  • 節税メリットを享受しやすい(法人の経費の範囲、所得区分に関係なく損益通算、欠損金の繰越期間が長い等)

  • 代表者の給与に関して、給与所得控除ができる。また、退職金を支給できる

 

 

Q:法人成りのデメリットを教えてください。

 

  • 法人としての事務が増える(登記事項、株主総会、税務調査対応など)

  • 源泉徴収義務者となる

  • 社会保険の強制加入(社会保険の法人負担)

  • 均等割りの負担(赤字の場合でも一定額発生)

 

 

Q:法人成りに伴い、所得税に影響がありますか?

 

  • 個人事業主から法人に事業用資産を引き継ぐ場合、譲渡所得が発生する場合があります。また、生活用動産を譲渡する場合は非課税とされています。

 

(参考)生活用動産の譲渡による所得

家具、じゅう器、通勤用の自動車、衣服などの生活に通常必要な動産の譲渡による所得です。ただし、貴金属や宝石、書画、骨とうなどで、個又は組の価額が万円を超えるものの譲渡による所得は除きます。

 

 

Q:法人に引き継ぐ資産を選定する際の留意点を教えてください。

 

  • 法人名義に書き換えた場合に費用が発生する場合があります。例えば、自動車の場合は移転登録や車庫証明書の取得費用等が発生し、事業用保険に切り替えることで保険料が高くなることもあります。

  • 個人事業主の帳簿残高と時価が乖離する場合は譲渡価格に留意する必要があります。税法上の償却が終わった資産でも中古トラックのように時価が高くなりやすい資産を法人に引き継ぐ場合には個人に譲渡所得が発生する可能性があります。

  • 引継ぎ資産の時価が容易に把握できない場合でも、第三者の鑑定評価など、取引価額に客観性を持たせる工夫が必要になります。

  • 法人に資産を引き継ぐことで手間とコストが発生する場合は、個人法人間で使用貸借契約を結ぶ方法もあります。使用貸借契約として、法人が資産を利用することで、所得税や法人税による課税は生じないことになります。ただし、個人事業主の未償却残高が法人で減価償却できないというデメリットもあります。

 

 

Q:引継ぎ資産は中古資産に該当するとのことですが、耐用年数について教えてください。

 

中古資産を取得した場合、資本的支出が多額に発生する場合を除いて、簡便法による耐用年数を使用することができます。その結果、通常よりも減価償却を多く計上することができます。

(簡便法)

  1. 法定耐用年数の全部を経過した資産
    その法定耐用年数の20%に相当する年数

  2. 法定耐用年数の一部を経過した資産
    その法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数に経過年数の20%に相当する年数を加えた年数

なお、これらの計算により算出した年数に1年未満の端数があるときは、その端数を切り捨て、その年数が2年に満たない場合には2年とします。

国税庁HP: No.5404 中古資産の耐用年数

 

 

Q:法人成りに伴い、個人の消費税に影響がありますか?

 

 個人事業主が課税事業者の場合、法人に引き継ぐ資産は課税売上高として消費税が課されるため、課税事業者になる前に法人成りすることで消費税の影響を受けにくくなります。個人事業主が消費税を課された場合でも、法人が「課税事業者選択届出書」を提出し課税事業者を選択することで、法人では課税仕入れとして仕入税額控除を適用する方法もあります。

 

 

Q:法人成りに伴い、個人事業の廃業で必要な手続きを教えてください。

 

税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書 」を廃業1ヶ月以内に提出し、所轄県税事務所に「事業開始(廃止)等申告書 」を提出します。

また、青色申告の場合には「青色申告の取りやめ届出書」、従業員を雇用していた場合は「給与支払事務所等の廃止届出書」を提出します。