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節税Q&A

Q:一般的に利用できる節税にはどのようなものがありますか?

 

青色申告の特典を受ける

 

期限内に「青色申告承認申請書」を提出した場合、以下のような特典を受けることができます。提出期限は、新設法人の場合は、設立後3ヶ月以内もしくは設立事業年度終了日のいずれか早い日の前日までとなります。

  • 欠損金の繰越控除…過去に生じた欠損金を繰り越して、翌期以降の所得と相殺できる。

  • 欠損金の繰戻還付…欠損金が生じた場合、その事業年度開始日から過去1年以内に開始した事業年度の利益と欠損金を相殺することができる。

  • 中小企業者等の少額減価償却資産の特例…30万円未満の減価償却資産を取得した際に、一括償却できる(年間で合計3百万円まで)

  • 特別償却と税額控除の適用…一定の要件に該当する場合に、通常の減価償却費にプラスして減価償却費を計上することができる。また、一定の支出があった場合に直接的に税額を控除する制度を利用することができる。

  • 推計課税の制限…推計課税とは、売上や経費が不明な場合に、同規模同業者などを参考に所得金額を推計して課税されるもので、そのような推計課税が行われない。

 

 

旅費規程をつくる

 

出張が多い場合に、旅費規程を策定し、一定のルールの基で旅費(日当や宿泊費)を支給すれば、個人にとっての非課税所得が増える余地があります。例えば、宿泊費は実費ではなく1万円を一律に支給するとした場合、実費が7千円だったとしても差額が給与課税されないと考えていいでしょう。その他に、支給した法人では消費税の課税仕入れとなり、個人では所得とならないため社会保険料にも影響を与えないことになります。

 

 

社宅規程をつくる

 

自宅を賃借している場合に、社宅規程を策定し、法人が住宅を賃借して、役員または従業員に実際の賃料よりも低い価格で貸し付けることで、役員または従業員に差額分の給与を支給しているのと同様の効果があります。賃料は一定の計算式(税務上定められている賃料相当額)に当てはめて設定すればよいですが、実際の賃料の10~20%程度に計算されるケースが多いと考えられます。

 

 

従業員に対する給与を増額して税額控除の適用を受ける(賃上げ促進税制)

 

一定の要件(前年より給与総額が増加、増加率が1.5%以上)を満たす場合に、増加した給与の15%を直接税額から控除することができます。また、追加要件を満たせば、増加した給与の25%控除と恩恵が拡大します。

 

 

役員給与を活用する

 

役員給与は損金に算入されるので、利益の水準を抑えることに効果的です。また、役員個人は給与所得となるため、最大195万円の給与所得控除を適用することができます。

ただし、利益操作防止の観点より、原則として損金に算入されるのは毎月同額を支給した場合に限られます(定期同額給与)。役員賞与も支給することはできますが、会計期間開始の日から4ヶ月以内に届出をする必要があるなど(事前確定届出給与)、事後的に決定すると損金にならない点に注意が必要です。

 

 

親族を役員にする

 

たとえば、妻を役員にして夫の役員報酬の一部を妻に支給すれば、所得は分散され世帯にかかる税率は低くなります。勤務実態がないにもかかわらず、役員報酬を支給すれば不相当に高額と判断され損金不算入となりますが、勤務実態があり適正な金額を支給していれば問題ないと考えられます。

 

 

福利厚生制度をつくる

 

福利厚生は給与を増加させずに従業員の士気を高める効果があります。給与を増加させないので、社員個人の所得税や社会保険料に影響を与えないことや、法人にとっても消費税の課税仕入れになるといった別のメリットもあります。福利厚生の内容として、忘年会や新年会、社員旅行などがありますが、全ての従業員を対象とすることが必要です。特定の従業員に対する支出は、福利厚生ではなく給与課税となります。

 

 

30万円未満の固定資産を取得する

 

通常では10万円以上の固定資産を取得した場合、法定耐用年数に基づき、減価償却計算を行う必要がありますが、青色申告書を提出する中小企業者等は、30万円未満の固定資産の取得につき、全額を経費計上することができます(年間で合計300万円まで)。ただし、その場合でも償却資産税の課税対象となるため、償却資産税の計算対象に含める必要があります。

 

 

20万円未満の繰延資産を一括費用化する

 

事務所等を賃借する場合の礼金や保証金の償却部分、広告宣伝用資産、共同的施設の負担分などは税務上の繰延資産に該当し、一定期間で償却計算する必要がありますが、20万円未満のものは一括して費用化することが可能です。

 

 

固定資産を細分化する

 

更新工事など、固定資産によっては資本的支出部分と修繕部分が含まれており、明細を分けることで修繕部分は経費計上できます。また、工事の内容に建物部分と建物付属設備・構築物部分など種類が分かれている場合もそれぞれ細分化して計上することで、後者には短い耐用年数で償却計算をすることができます。

 

 

中古資産を取得する

 

新品で取得するより中古資産のほうが耐用年数を短く設定することができます。具体的には、法定耐用年数の全部が経過した資産は、耐用年数×20%を耐用年数として償却計算でき、費用化できる割合が新品よりも大きくなります。

 

 

交際飲食費を5千円以下とする

 

資本金1億円以下の法人では、年間8百万円以内であれば、交際費は損金に算入することができます。そこで、交際費を8百万円以上使うような場合に、接待にかかる飲食代を一人当たり5千円以内とすることで、8万円の損金枠とは別に損金に算入することができます(得意先等の氏名や人数等を記載した一定の書類を保存することが必要です)。

 

 

仮決算を検討する

 

前期の納税額に基づき、中間納税(税金の前払い)をする必要があります。通常は、前期の納税額の半額程度を納付(消費税は中間納税回数に応じて変動する)することになりますが、前期より業績が落ち込んでいる場合に、仮決算を行うことで中間納税額を低く抑えることが可能です。通常の決算作業と同様の業務負担があるので、資金繰りの状況を検討のうえ判断することが必要です。

 

 

経営セーフティ共済(倒産防止共済)に加入する

 

毎月5千円~20万円の掛け金を選択することができ、1年分を前払いすることで年間240万円を損金に算入することが可能です(最大で8百万円までの掛け金を損金算入可)。なお、40ヶ月加入を継続することで、解約時には掛け金全額を受け取ることができます。損金計上するには、申告時に該当する別表を添付することが必要です。

中小企業庁HP:経営セーフティ共済

 

 

役員退職金規定をつくる

 

退職金の支給は、法人のみならず、個人にとっても税務上の大きなメリットがあります。所得税計算上、給与等の他の所得とは別に計算され(分離課税)、退職金支給額から退職所得控除額を差し引き、さらに2分の1が課税対象となります(給与等と比較しても税率が半分となる)。ただし、役員退職金の場合、支給額が過大と判断されれば、不相当に高額な部分は損金不算入となり注意が必要です。

貯蔵品を損金にする

 

パンフレットや試供品、事務用品、包装資材などが貯蔵品に該当しますが、通常は、期末に未使用となっているものは資産に計上する必要があります。例外として、毎年一定数量を取得し経常的に消費するものは、継続適用を条件に、取得時に損金算入することができます。棚卸不要で手間も減り、さらに損金算入可能なので効果的な方法になります。

 

 

貸倒引当金を計上する

 

中小企業者等は、期末の売上債権に法定繰入率(卸・小売業の場合は1%)を乗じた金額を一括評価金銭債権にかかる貸倒引当金として損金計上することができます。

 

 

短期前払費用を損金にする

 

通常、前払いした経費は対応する期間の損金に算入されるため、支払った時点の損金とはなりません。例外として、継続適用を条件に、支払った日から1年以内に役務提供を受けるものに関しては支払い時に損金に算入することができます。ただし、以下のような場合は除外されます。

  • 賃貸契約などにおいて、「翌月分の家賃を当月末までに支払う」という内容であるにもかかわらず、1年分の家賃を先払いした場合。

  • 収益に対応させる必要があるもの。

  • 前払対象期間が1年超となる場合、1年以内部分と1年超部分を分けたとしても、1年以内部分を損金に算入することはできません。

  • 短期前払費用の処理は、会計上の重要性の原則を税務上も認めたもので、売上高に対する割合が大きいものも認められません。

 

 

未払社会保険料を計上する

 

社会保険料は、前月分を当月末に納付しています。そのため、4月に支払う社会保険料は3月末時点では未払いとなっており、会社負担分を損金算入することができます。当期において現金支出を伴わない損金となります。

 

 

未払給与を計上する

 

給与支給基準に関して、例えば、20日締め25日払いとしている場合、月末時点では21日~月末分の給与が未払いとなっているため、損金計上することができます。当期において現金支出を伴わない損金となります。

 

 

未払賞与を計上する

 

以下の要件を満たす未払賞与は、損金に算入することができます。当期において現金支出を伴わない損金となります。

  • 同時期に支給を受けるすべての使用人に対して、各人別に事業年度末日までにそれぞれ通知をしている

  • 翌期首1ヶ月以内に①の通知どおりに支給している

  • ①の通知をした日の属する事業年度において損金経理している

 

 

小規模企業共済を利用する

小規模企業共済は、小規模企業の経営者や役員、個人事業主などのための、積み立てによる退職金制度です。掛け金は月額5千円~7万円の間で自由に決定することができます。掛け金は経営者等が個人で支払う必要がありますが、掛け金全額を所得控除できるので、その分だけ役員報酬を増額して、会社の経費を増やすことができます(役員報酬が増額しても掛け金を支出した個人の税金は増加しないことになります)。退職後の資金を作ると同時に節税ができる制度となります。

中小企業庁HP:小規模企業共済

中小企業退職金共済に加入する

中退共は、一定の中小企業の退職金制度です。従業員に対する退職金は、通常では退職時に損金に計上されますが、会社が中退共の掛け金を拠出しただけで損金に算入することができます。従業員の退職時は、会社を通さず直接退職者に支給されます。月々の掛け金は従業員ごとに5千円~3万円の範囲で自由に選択できます。

​勤労者退職金共済機構HP:中退共

 

 

広告宣伝費を支出する

 

期末までに支出すれば、広告宣伝による売上増加は翌期以降に期待できるので、当期においては節税になります。ただし、広告掲載が期末までに実施されなければならない等の留意点があります。

 

 

消費税の経理方法を税込みではなく税抜処理とする

 

消費税の経理方法を税抜処理とすることで以下のようなデメリットを回避することができます。

  • 青色申告を提出する中小企業等は、30万円未満の少額減価償却を全額損金に計上することができますが、30万円未満の判定は採用した消費税の経理方法によります。例えば、税抜き29万円の減価償却資産を購入した場合に、税込処理を採用している場合は、通常どおり減価償却計算をする必要があります。

  • 中小法人では、8百万円の交際費を損金に計上することが認められていますが、税込処理を採用している場合、消費税分(80万円)だけ交際費の枠が少なくなってしまいます。

 

 

従業員を外注業者とする

 

給与と外注費では主に消費税の取り扱いに違いが生じます。給与は不課税なのに対して、外注費は課税仕入れに該当するので、支払った消費税を受け取った消費税から控除して、納付する消費税を少なくすることができます。従業員か外注先かの違いは以下の点を考慮して総合的に判断する必要がありますが、働き方の見直しに伴い、雇用関係を変更する場合は、給与を外注費として消費税を少なくできる可能性があります。

  • 他人が代替して業務を行えるか →通常、代替して業務を行えるのが外注先

  • 外注先が自ら金額を計算し、請求書を発行しているか →通常、自分で請求金額を決定するのが外注先

  • 指揮監督命令を受けるか →通常、指揮監督命令を受けないのが外注先

  • 引き渡しを受けていない完成品が不可抗力のため滅失した場合に、提供した役務にかかる報酬を請求することができるか →通常、請求できないのが外注先

  • 役務提供にかかる材料や用具等の支給をうけているか →通常、自分で用意する場合が外注先

売上の締め日を期末日の10日前に設定する

 

決算日より前の日に売上の締め日を設定し、各事業年度の収入と支出を計算することも認められています(以下の要件を満たす必要があります)。売上が10日分翌期に処理されることに加えて、決算作業が早期化されるメリットもあります。当該処理を採用する場合、対応する原価も同様の締め日に設定することが必要になります。

  • 商習慣その他相当の理由があること

  • 締切日は事業年度終了の日以前10日以内であること

  • 毎期継続して適用すること

国税庁HP:(決算締切日)

 

 

売上割戻しを損金計上する

 

売上割戻しの算定基準が取引先に明示されている場合、商品等を販売したときに損金計上されます。それ以外の場合、取引先に通知した日または支払った日に損金に計上されますが、何らかの事情があり取引先に事前に算定基準を明示できない場合は、以下の要件を満たすことで、販売日に損金計上することができます。

  • 支払うことが期末までに確定している

  • 算定基準が内部的に決定している

  • 未払金に計上している

  • 確定申告期限までに通知している

  • 毎期継続して適用している

国税庁HP:(売上割戻しの計上時期)

別会社をつくる

会社が増えることで、新設した会社では追加的に節税メリットを受けることができます。事業が複数ある場合などで、各事業部に独立採算性を持たせることを検討しているケースでは、別会社とすることも有効です。

  • ​資本金1億円以下の一定の法人は、課税所得8百万円まで軽減税率が適用されます(現行:23.2%→15%)。また、一定の条件のもと法人住民税率や法人事業税率も軽減税率適用となります。

  • 新設法人では、資本金が1千万円未満の場合、最大2年間消費税の免税事業者となれる可能性があります。

  • 青色申告を提出する中小企業者などが、グループ会社で資産を共同購入することで、60万円未満の資産でも全額損金とすることができます(各社30万円未満支出した場合)。

  • ​新設会社で新たに、交際費の損金算入枠(8百万円)が与えられます。

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