源泉徴収税Q&A

 源泉徴収制度では給与等の支払いを行う源泉徴収義務者(法人または個人)が適切に徴収して期日までに納付する義務があります。そのため、源泉徴収の対象を理解し、誤りやすい点を事前に把握し、納税漏れを防ぐ必要があります。

 国税庁HPには、源泉徴収関連のパンフレットが公表されています。(令和2年版 源泉徴収のしかた令和2年分 年末調整のしかた

 

 

Q:給与や退職金以外に源泉徴収が必要になる内容を教えてください。

 

源泉徴収が必要な範囲は、受給者が個人か法人かで相違します。また、個人であれば居住者か非居住者か、法人であれば内国法人か外国法人かによっても源泉徴収の対象は異なります。源泉徴収の対象は多岐にわたりますが、給与や退職金以外で一般的に多いのは、税理士や弁護士等に対する報酬や配当金の支払いが該当します。

国税庁HP: Ⅴ.源泉徴収の対象となる所得の範囲

 

 

Q:源泉所得税の納税義務はいつ成立しますか。

 

源泉徴収すべき所得の支払の時に成立することとされています。そのため、支払の時の翌月10日までに預かった源泉所得税を納税することが必要です。

ただし、配当等または役員に対する賞与については、支払の確定した日から1年を経過した日までに支払いがない場合には、その日に支払があったとみなされる、という例外もあります。

国税庁HP: No.2526 給与が一部未払の場合の源泉徴収

 

 

Q:源泉所得税の納期の特例について教えてください。

 

源泉所得税は原則として源泉徴収すべき所得を支払った月の翌月10日までに納税する必要がありますが、従業員が10未満の小規模な源泉徴収義務者の場合、事前に税務署に届出を行うことで、以下の所得に対して、年2回(1月~6月分を7月10日まで、7月から12月分を翌年1月20日まで)にまとめて納税することができます。

  • 給与や退職金から源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税

  • 税理士、弁護士、司法書士などの一定の報酬から源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税

国税庁HP:No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例

 

 

Q:源泉徴収事務の年間スケジュールを教えてください。

 

所得税は暦年課税(1月1日から12月31日まで)により納税されるので、源泉徴収事務も1月から12月の年末調整のサイクルで実施されます。年末調整後の翌年1月には、給与所得の源泉徴収票や支払調書の本人交付、税務署提出が行われます。給与や退職金関係以外にも、弁護士や税理士に対する顧問料などの報酬・料金等の支払いをする場合には源泉徴収が必要になります。

  • その年最初に給与の支払いをする日の前日までに、「給与所得者の扶養控除等申告書」を各受給者から提出してもらい、控除対象配偶者の有無や控除対象扶養親族の人数などを把握する必要があります。アルバイトやパートの従業員も原則として提出してもらいます。

  • 給与の支払いごとに、「給与所得の源泉徴収税額表」を使用して、その月に徴収すべき税額を算出し、給与から天引きして支給します。また、賞与を支給した場合は、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使用して源泉徴収税額を算出します。これら源泉徴収した税金は翌月10日までに納付しなければなりません。

  • 年末調整は、その年最後の給与を支払う際に、毎月徴収してきた源泉調整税額の総額と年間給与総額に対する確定税額を比較して、過不足があれば精算する手続きです。年末調整にあたって、「基礎控除申告書」や「配偶者控除申告書」、「保険料控除申告書」等を配布し、該当する場合に、生命保険料控除などを計算してもらい提出してもらいます。各従業員別の年末調整を行い、確定税額を計算します。

  • 給与所得以外では、退職者があった場合には、「退職所得の受給に関する申告書」を提出してもらい、これに記載された勤続期間に基づいて退職所得控除額を計算し、源泉徴収税額を計算します。また、税理士や弁護士等に報酬を支払う場合には、報酬額に応じた源泉徴収税額を差し引いたうえで支払います。源泉徴収税額を計算する際の税額は、1回の支払金額が100万円以下である場合は10.21%、100万円を超える場合の超える部分の金額は20.42%を適用します。

  • 給与等の年末調整が終了したら、従業員ごとに「給与所得の源泉徴収票」を作成し、本人に交付するとともに、合計表を添付して翌年1月までに税務署にも提出します。報酬・料金や不動産の使用料等の一定の支払いがある場合は、支払調書を作成して、同様に提出を行います。

Q:年末調整の対象者を教えてください。

 

年末調整を行う日までに、「給与所得者の扶養控除等申告書」を会社に提出している人が対象ですが、以下の者は除きます。

  • 1年間の給与総額が2,000万円を超える人

  • 災害減免法の規定により、その年の給与に対する所得税等の源泉徴収について徴収猶予や還付を受けた人

また、年の途中であっても、海外転勤や死亡によって年末調整の対象となります。

国税庁:No.2665 年末調整の対象となる人

 

Q:年末調整の流れを教えてください。

​ 年末調整の流れは以下のようになります。従業員から年末調整に必要な各種情報を収集(各種用紙)した上で、確定税額を計算しますが、人事労務freeeなどの管理ソフトを利用すると、煩雑な作業もスムーズに行うことができます。

 

Q:給与所得には、食事の提供や商品の値引き販売なども含まれますか?

 

給与は金銭支給が通常ですが、金銭支給以外の現物で支給される場合があります。現物で支給されるものを「現物給与」と呼びますが、これらも給与所得に含まれます。

ただし、所得の性質を考慮して以下のような非課税所得もあります。

  • 職務遂行上の旅行に要する旅費

  • 通勤手当や通勤用定期乗車券

  • 職務の性質上各ことのできないものとして支給または貸与される整復や身回品

  • 国外勤務に伴い支給される在外手当

国税庁:No.2508 給与所得となるもの

 

Q:非課税の旅費の範囲を教えてください。

 

給与所得者について、次の支出に充てるために支給される金品で通常必要と認められるものについては、課税されません。

  • 勤務する場所を離れてその職務を遂行するために行う旅行

  • 転任に伴う転居のために行う旅行

 

通常必要と認められる範囲内に限られますが、次の事項を勘案して判定されます。

  • 支給額が、支給を受ける人のすべてを通じて適切なバランスが保たれている基準により計算されたものかどうか。

  • 支給額が、その支給をする使用者等と同業種、同規模の他の使用者等が一般に支給している金額に照らして相当と求められるものかどうか。

 

つまり、旅費が非課税とされるのはあくまでも業務遂行上の旅行を行った場合の実費弁償が原則なので、業務遂行に関係のない旅行や必要な範囲を超えた部分は非課税とされません。また、職務を遂行するための旅費であっても、年額又は月額の定額で支給されるものも非課税となりません。

 

 

Q:非課税の通勤費の範囲を教えてください。

 

通勤手段や距離に応じて変動します。また、交通機関または有料道路を利用している場合の最高限度額は15万円ですが、新幹線を利用する場合のグリーン料金は含まれません。具体的な金額については一覧表を参照してください。

 

 

Q:マイカー通勤の場合、転勤に伴い、通勤距離が現在よりも長くなります。非課税限度額の計算方法を教えてください。

 

マイカー通勤をしている場合は、通勤距離によって非課税限度額が決まります(仮に25㎞以上35㎞未満の場合は月額18,700円)。転勤に伴い、月の途中で通勤距離が変動になった場合の非課税限度額について法令上、特に定めはありませんので、通勤者に不利にならないような非課税限度額を設定しても問題ないと考えられます(変更前と変更後の通勤距離を比較して長いほうを選択するなど)

 

 

Q:アルバイト社員に通勤手当を支給する場合は、非課税の適用から除かれますか?また、非課税が適用される場合、非課税限度額は日割り計算など必要でしょうか?

 

アルバイト社員にも非課税の適用があります。また、非課税限度額を日割り計算する取り扱いはないので、月額で考えても問題ないと考えられます。

 

 

Q:男性社員全員に、同一規格のスーツの着用を義務付けることに伴い、スーツを支給することになりました。当該支給は給与所得として源泉徴収の対象となりますか?

 

給与所得者がその使用者から受ける金銭以外の者でその職務の性質上欠くことのできないものとして、制服を着用すべき者がその使用者から支給される制服等は課税されないこととされています。制服以外でも専ら勤務場所のみにおいて着用する事務服、作業服等についても同様に課税されないことになります。

そのため、勤務場所以外においても私用として着用できる衣服は、非課税とされる事務服、作業服等に該当しないことになります。

課税されるかどうかはのポイントは以下のとおりです。

  • 勤務場所以外でも着用できるものかどうか

  • 特定の職務に従事する職員であること又は特定の使用者の使用人であることが判別できるものであるか

 

よって、男性社員全員に同一規格のスーツ着用を義務付けたとしても、私用にも着用できる一般の外出着と何ら変わることがない場合は、給与所得として源泉徴収が必要です。

 

 

Q:社員にデジタル化に伴う、社外研修や講座を受講させ、これら研修費用を会社が負担する予定です。当該負担は給与所得として源泉徴収の対象となりますか?

 

会社が役員又は使用人に対して技術や知識を習得させ、又は免許や資格を取得するための研修会や講習会等の出席費用等に充てるために支給する金品については、以下の要件を満たせば課税しなくて差し支えないとされています。

  • 技術の習得等が使用者の業務遂行上の必要に基づくものであること(業務遂行上の必要性)

  • 同じく役員又は使用人としての職務に直接必要なものであること(受講者等の職務との関連性)

  • これらの費用として適正であること(金額の妥当性)

 

よって、デジタル化に伴う業務効率化などが会社の方針として存在し、当該社員が直接関与するなどの事実があれば、一般的な研修などの費用は課税しなくても問題ないと考えられます。

 

 

Q:社内で事務や作業の合理化、製品の品質の改善や経費の節約等についてアイデアを募集し、採用者には賞金または賞品を贈呈する予定ですが、給与所得として源泉徴収の対象となりますか?

 

社内提案制度において、支給する賞金等は、その工夫、考案等がその者の通常の職務の範囲内の行為である場合には給与所得、その他の場合には一時所得(その工夫、考案等の実施後の成績等に応じて継続的に支払いを受けるときには、雑所得)として課税されます。給与所得であれば源泉徴収が必要ですが、一時所得又は雑所得の場合は不要です(その代わり確定申告が必要になる場合があります)。

また、賞品の場合も課税されますが、給与課税される価額は、通常売買される価額か購入価額になりますが、広告宣伝等のための商品の評価を準用して通常の小売販売価額(現金正価)の60%相当額によっても差し支えないと考えられます。

国税庁:No.2592 使用人等の発明に対して報償金などを支給したとき

 

Q:従業員の慶弔に際して金品を支給する場合、給与所得として源泉徴収の対象となりますか?

 

原則として給与として課税されますが、金額が支給を受ける者の地位等に照らし社会通念上相当と認められるものは、課税しなくて差し支えないとされています。社会通念上相当と認められる金額が問題となりますが、一般的な相場を参考に支給していれば問題になりません。また、災害等の見舞金を支給する場合は、一般的な相場がないので、ケースバイケースで判断する必要があります。

 

 

Q:忘年会やレクリエーション費用を会社が負担した場合、給与所得として源泉徴収の対象となりますか?

 

社会通念上一般的に行われている内容で、経済的利益が多額でなければ、給与課税されません。ただし、行事不参加者に対して、代わりに金銭を支給すると、不参加者は当然に給与課税となりますが、行事に参加した者も同様の金額で給与課税されることになります。課税されるかどうかのチェックポイントは以下になります。

  • レクリエーション行事としてふさわしいか

  • 特定の者だけを対象としていないか

  • 不参加者に現金を支給していないか

Q:従業員慰安旅行の行き先が海外の場合、課税の対象になりますか?会社の負担額は一人あたり10万円程度を予定しています。

 

旅行期間が4泊5日以内であり、従業員等の参加割合が50%以上で、かつ、会社の負担額が1人あたり10万円程度であれば、課税されないと考えられます。行き先が海外の場合は、現地滞在期間が4泊5日以内であれば、問題ないです。また、参加割合について、全従業員一斉でなくても、工場や支店などの区分した単位で50%以上かどうかを判定しても差し支えないと考えられます。

国税庁HP: No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行

 

 

Q:従業員に商品等を値引き販売する場合に、値引額に対して課税されますか?

 

次の要件いずれにも該当する場合は、課税しなくてもよいとされています。

  • 値引販売に係る価額が、使用者の取得価額以上であり、かつ、通常他に販売する価額に比し著しく低い価額(通常他に販売する価額のおおむね70%未満)でないこと

  • 値引率が、役員若しくは使用人の全部につき一律に、又はこれらの者の地位、勤続年数等に応じて全体として合理的なバランスが保たれる範囲内の格差を設けて定められていること

  • 値引販売をする商品等の数量は、一般の消費者が自己の家事のために通常消費すると認められる程度のものであること

※食事については上記とは別途取り扱いが定められています。

 

また、セール期間中などにより既に値引販売している商品については、値引後の価額に対して70%未満でないか判断することになります。

 

 

Q:外注先などに報酬・料金を支払う場合に源泉徴収が必要とのことですが、給与所得などの源泉徴収との違いや留意点について教えてください。

 

源泉徴収税額の計算は、報酬・料金等の種類によって相違しますが、具体的な内容は国税庁HP「Ⅰ居住者に対して支払う報酬・料金等」のとおりです。主な留意点としては以下のとおりです。

  • 名目問わず(たとえば、謝礼、賞金、研究費、取材費、材料費、車賃など)、報酬・料金等の性質を有する支払いは、源泉徴収の対象になります。

  • 金銭に関わらず、物品や経済的利益についても含みます。

  • 旅費を負担する場合、交通機関やホテル等に直接支払われ、その金額が通常必要と認められる範囲内のものに限り、源泉徴収不要とされています。そのため、外注先などに支払う旅費は原則として源泉徴収をする必要があります。

  • 報酬・料金等の支払額が税引手取額で定められている場合は、逆算して税込金額を算定して、源泉徴収税額の計算をする必要があります。

  • 消費税の取り扱いについて、報酬・料金等の金額と消費税が明確に区分されていれば、報酬等の金額のみ源泉徴収の対象とされますが、区分されていない場合は消費税も含んだ金額に対して源泉徴収する必要があります。

 

 

Q:報酬・料金等の源泉徴収税額について、具体的な計算例を教えて下さい。

 

(ケース1)税理士に顧問料55,000円(税込)を支払う

消費税が明確に区分されている場合

50,000円×10.21%=5,105円

消費税が明確に区分されていない場合

55,000円×10.21%=5,615円

 

(ケース2)弁護士に報酬165万円(税込/区分表示あり)を支払う

150万円が報酬金額なので、

1,000,000円×10.21%+(1,500,000円-1,000,000円)×20.42%=204,200円

※弁護士や税理士等への支払いは、100万円までは税率10.21%、100万円を超える部分は20.42%

 

(ケース3)司法書士に報酬33,000(税込/区分表示あり)を支払う

30,000円が報酬金額なので、

(30,000円-10,000円)×10.21%=2,042円

※司法書士や土地家屋調査士への支払いは1万円を控除した金額に税率を乗じるとされている。

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