減価償却資産Q&A
減価償却資産を取得した際は、減価償却台帳に登録を行い、一定期間にわたり減価償却計算を実施することになります。減価償却資産の登録にあたり、①取得価額の決定、②事業共用日の判定、③種類の区分、④耐用年数の決定が特に重要となります。その他、減価償却資産に修理等を施した場合に、資産に計上すべき資本的支出に該当するのか、費用に計上すべき修繕費に該当するのかの判断も実務的な重要性が高くなります。
取得価額の決定
Q:本体価格以外に固定資産の取得価額の範囲を教えてください。
原則として、資産の購入代価と事業の用に供するために直接要した費用が含まれます。また、引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税などその資産の購入のために要した費用も含まれます。ただし、以下の費用は取得価額に算入しないことができます。
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不動産取得税、自動車取得税、登録免許税等の諸税金
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建物の建設等のために行った調査、測量、設計、基礎工事等でその建設計画を変更したことにより不要となったものに係る費用
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いったん締結した減価償却資産の取得に関する契約を解除して、他の減価償却資産を取得することにした場合に支出する違約金
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減価償却資産を取得するための借入金の利子(使用を開始するまでの期間に係る部分)
国税庁:減価償却資産の取得価額に含めないことができる付随費用
また、固定資産の区分ごとの取得価額の範囲は以下のとおりです。
Q:社用車の購入にあたり、取得価額の範囲を教えてください。
車両の取得価額の範囲は以下のとおりです。また、中古車を取得した場合で、未経過自動車税、未経過自賠責保険料が含まれている場合は、取得価額に含めます。
車両本体価格・・・取得価額に含める
付属品及び特別仕様・・・取得価額に含める
納車費用・・・取得価額に含める
自動車環境性能割(旧自動車取得税)・・・取得価額に含めないことができる(租税公課)
自動車税種別割(旧自動車税)・・・取得後の費用であり取得価額に含めない(租税公課)
自賠責保険料・・・取得後の費用であり取得価額に含めない(保険料)
法定費用・・・取得価額に含めないことができる(支払手数料)
手続代行費用・・・取得価額に含めないことができる(支払手数料)
リサイクル預託金・・・預託金として資産計上
Q:自社HPを制作するにあたり、取得価額の範囲を教えてください。
自社HPは企業や商品をPRするために制作され、頻繁に更新されるものであるため、制作費用は原則として広告宣伝費に該当し、支出時に損金に算入されます。ただし、制作したHPの使用期間が1年以上に及ぶ場合は法人税法上の繰延資産として使用期間で均等償却することになります。また、検索機能などプログラム部分はソフトウェアに該当し、減価償却します。
企業PR・・・定期的に更新されることを前提に損金(広告宣伝費)
自社製品の検索機能・・・ソフトウェア
簡易見積もり機能・・・ソフトウェア
オンラインショッピング機能・・・ソフトウェア
お問い合わせ・・・広告宣伝費
(研究開発費等に係る会計基準一2)
ソフトウェアとは、コンピュータを機能させるように指令を組み合わせて表現したプログラム等をいう。
(研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針6項)
本報告におけるソフトウェアとは、コンピュータ・ソフトウェアをいい、その範囲は次のとおりとする。① コンピュータに一定の仕事を行わせるためのプログラム ② システム仕様書、フローチャート等の関連文書
Q:取得価額が30万円未満の資産について、選択できる処理方法を教えてください。
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使用期間が1年未満又は取得価額が10万円未満の場合、事業共用日に消耗品費等として全額損金算入することができます(少額減価償却資産)
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取得価額が20万円未満の場合、通常の減価償却計算をせずに3年間で均等に損金算入することができます。(一括償却資産)
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青色申告書を提出する中小企業者等が取得価額30万円未満の減価償却資産を取得する場合、事業共用日に全額損金算入することができます(中小企業者等の少額減価償却資産の特例)。ただし、年間300万円が特例償却の上限になります。
事業共用日の判定
Q:減価償却費を計上しはじめるのは、取得日または事業共用日のどちらですか?
減価償却資産とは、「事業の用に供していないもの及び時の経過によりその価値の減少しないものを除く」とされており、事業の用に供することが減価償却計算の前提になります。そのため、取得しただけでは減価償却計算は実施せず、実際に事業の用に供した時点から減価償却費を計上します。また、少額減価償却資産や一括償却資産も同様に事業共用日に適用されることになります。
種類の区分
Q:減価償却資産の種類によって、償却方法や耐用年数が相違するため、減価償却計算に大きな影響が及ぶと思いますが、当該種類は何に基づき区分しますか?
減価償却資産の種類の区分は、耐用年数省令に規定する種類に基づき、適正に分ける必要があります。ただし、種類の区分が明確でないケースもあり、個々の状況から判断しなければならない場合があります。以下は資産の種類ごとの償却方法になります。
耐用年数の決定
Q:耐用年数の決定方法について教えてください。
原則的には、適切な耐用年数を見積もることになりますが、多くの企業が法人税法に定められた耐用年数表を用いて決定しているのが現状です。
Q:中古資産を取得した場合は、償却計算が有利になるとのことですが、耐用年数の決定方法について教えてください。
中古資産を取得した場合、法定耐用年数ではなく、使用可能期間を見積もり耐用年数とすることができます(見積法)。また、実務上は使用可能期間を適切に見積もることが容易ではないことが多いので、その場合は以下の簡便法により算定した耐用年数を用いることができます。ただし、その中古資産に対する資本的支出がその中古資産の再取得価額(中古資産と同じ新品のものを取得する場合の価額)の50%に相当する金額を超える場合は、耐用年数の見積りをすることはできず、法定耐用年数を適用することになります。