利益が出ているのにお金が足りない理由とは?
- 智史 長谷川
- 5月30日
- 読了時間: 4分
「黒字なのに資金繰りが苦しい」「決算書では利益が出ているのに、通帳にはお金がない」
——こうした経営者の声をよく耳にします。一見すると矛盾しているように思えるこの現象、実は多くの中小企業や個人事業主が直面する“経営の落とし穴”です。この記事では、その理由と具体的な対策を、会計の視点からわかりやすく解説していきます。
記事の要約
利益とキャッシュ(お金)は計算方法が異なるため、一致しないことがある
資金繰りを悪化させる主な要因は、「売上の回収タイミング」「設備投資」「借入金返済」「在庫の増加」など
損益計算書とキャッシュフロー計算書の見方を理解することが、黒字倒産のリスクを減らす第一歩
利益とお金の違いを理解しよう
利益とは?
「利益」は、売上から経費を引いた結果としての数字です。つまり、帳簿上での成績表のようなものです。発生主義(納品時や請求時)で計上されるため、実際に現金が動いていなくても利益が出ることがあります。
キャッシュとは?
一方で「キャッシュ」は、実際に銀行口座にあるお金、つまり現金主義で捉える資金の動きです。お金の流れに注目することで、日々の支払い能力や資金ショートの可能性を把握できます。
利益とキャッシュの違いを示す具体例
利益(損益計算書) | キャッシュ(資金繰り) | |
売上 | 納品時に計上 | 入金時に反映 |
経費 | サービスを受けた時に計上 | 支払い時に反映 |
設備投資 | 減価償却として数年に分割して費用化 | 購入時に全額支出 |
借入金返済 | 利息のみ費用計上(元本は計上されない) | 元本返済で資金減少 |
このように、同じ経済活動でも、計上のタイミングや範囲が異なることで「利益が出ているのにお金がない」という現象が起きるのです。
よくある資金不足の原因とその対応策
売上の入金が遅れている
売上は計上されたが、入金は2か月後…というケースでは、一時的に資金不足に陥ります。
対策:
・売掛金の回収条件を見直す(30日以内に変更など)
・ファクタリングの活用
設備投資による支出増
高額な設備を一括で支払うと、会計上は数年に分けて費用計上されますが、現金はその場で減少します。
対策:
・リースやローンを活用して支出を平準化
・投資前にキャッシュフロー計画を策定
借入金返済が重い
借入金の元本返済は利益に影響を与えませんが、資金繰りには大きく影響します。
対策:
・返済スケジュールを見直し、リスケジュールを検討
・新たな借り換えで月々の返済額を減らす
在庫の増加
在庫は現金をモノに変えてしまうため、売れなければ資金が戻りません。
対策:
・在庫の回転率を改善
・発注管理の見直し
【事例紹介】黒字でも倒産寸前だった飲食店の話
ある飲食店では、月次の損益計算書では常に黒字を出していたにもかかわらず、運転資金が足りず給与支払いに困る事態が発生しました。原因は、以下の通りです。
店舗改装のために自己資金を使いすぎた
顧客への売掛金の回収(カード決済の入金)が2か月先
スタッフ増員による人件費の増加
この店舗では、以下の改善策を講じました:
銀行から短期融資を受けて一時的なキャッシュ不足を補填
カード決済またはQR決済の入金条件を「当月末締め翌月10日払い」に見直し
改装費の一部をリース化し、キャッシュ流出を軽減
数か月で資金繰りが改善され、今では安定した経営に戻っています。
よくある質問(Q&A)
Q:黒字経営でも倒産することはありますか?
A:あります。これを「黒字倒産」と呼び、利益とキャッシュのギャップが大きいときに発生します。
Q:会計ソフトではキャッシュの動きも見られますか?
A:はい。freeeなどのクラウド会計ソフトでは、資金繰り表の作成や入出金管理が可能です。
まとめ
利益とキャッシュは「似て非なるもの」であり、どちらも重要な経営指標
キャッシュが不足する理由には、売掛金の回収遅れや過剰投資、借入金返済などがある
黒字でもキャッシュ不足で倒産するリスクは常にあるため、定期的な資金繰りチェックが必要
試してみよう!
売掛金の回収サイト(支払い条件)を確認してみる → 長すぎる場合は、見直し交渉や請求管理を徹底しましょう。
自社のキャッシュフロー表を作ってみる → 会計ソフトで簡単に作成可能。入出金予定を可視化しましょう。
今月と来月の支出予定を紙に書き出してみる → 設備投資や大口の返済がないか確認し、事前に資金対策ができるか検討を!